《鉄の過剰摂取に警鐘》拡散する細胞死フェロトーシスとは？

フェロトーシスとは？

フェロトーシスのフェロとは鉄という意味で、トーシスとは落ちるつまり死ぬ、鉄による細胞死という意味です。本日の内容は「鉄の過剰摂取」に関連しますので、鉄を含んだマルチビタミンを摂取されている方は特に注意して読んでください。

フェロトーシスは2012年に現スタンフォード大学のDixon博士らによって報告されたアポトーシスなどとは異なった新しいタイプの細胞死です。あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、ここ数年医学会では非常に注目を浴びて盛んに研究が行われています。

このフェロトーシスの何が重要なのかと言うと、まずこのフェロトーシスは非常に多くの病気に関連している点です。

そしてフェロトーシスが危険な細胞死なのかという理由、それは一つの細胞でフェロトーシスが起きると、周囲の細胞に巻き沿い的に連鎖して広がっていくということで、この研究は東北大学の五十嵐教授らによって報告されています。

このブログではフェロトーシスのメカニズム、フェロトーシスと関連している病気、フェロトーシスを予防する方法、またフェロトーシスの意外な利用方法について解説していきます。

フェロトーシスのメカニズム

フェロトーシスを簡単に説明すると、細胞内で鉄が過剰に増えたことで活性酸素が大量に発生して、それによりグルタチオンが枯渇してしまい、脂質の酸化を止めることができなくなり、ミトコンドリアがダメージを受けることで細胞死に至る一連の反応をフェロトーシスと呼びます。

鉄は赤血球のヘモグロビンの一部として酸素を運搬するなど非常に重要な働きがありますが、フェロトーシスに最も重要なのもこの鉄です。三価の鉄（Fe3＋）が細胞外から細胞内に吸収されると二価の鉄（Fe2＋）になります。この二価の鉄は非常に酸化能力が強く危険で、細胞内ではフェリチンと結合して安全な鉄として貯蔵されています。そして必要に応じて細胞外へと放出されます。

フェロトーシスではまず細胞内の鉄が増えることから始まります。この鉄は非常に酸化能力が高く、細胞内の活性酸素が増加します。活性酸素は体にとって非常に危険であることから、活性酸素を解毒するために私たちの体には防御システムとして抗酸化物質が存在しています。この活性酸素を減らすために多量の抗酸化物質であるグルタチオンが消耗されてしまいます。

また、細胞内でグルタチオンの重要な働きとしては、活性酸素により酸化された脂質を中和するグルタチオンペルオキシダーゼとしても働いています。

細胞内の鉄が過剰になることで、活性酸素が大量に発生し、グルタチオンが大量消費されてしまいます。それによりグルタチオンペルオキシダーゼが不足し脂質の酸化を止めることができなくなります。

この過酸化脂質はどこから発生するのかというと、最大の発生源は鉄から発生した活性酸素や、酸化した食品、薬などの異物、たばこ、アルコール、水銀、空気汚染、紫外線、過労などから発生する活性酸素と脂質が反応を起こして作り出されますが、フェロトーシスの場合は過剰な鉄になります。また炎症反応などによっても過酸化脂質はつくられます。

さらに、細胞膜やミトコンドリアの外膜にある多価不飽和脂肪酸（PUFA）は脂質酸化反応の影響を受けやすく、活性酸素と反応して過酸化脂質を発生させてしまいます。このPUFAが酸化されるときにも鉄が触媒として働くことから、鉄の存在が非常に重要です。

そして、過酸化脂質は更なる過酸化脂質を作り出す最悪の負のスパイラル脂質過酸化反応を引き起こします。これによりミトコンドリアの外膜は破裂、ミトコンドリアクリスタの消失、ミトコンドリアの萎縮と減少、などのダメージを受けて、細胞は死に至ります。

そしてこのフェロトーシスは神経疾患（アルツハイマー、パーキンソン病、ALSなど）、脳梗塞、心筋梗塞、I型糖尿病、肝硬変、腎臓病、COPDやアセトアミノフェンの過剰摂取などに関与されていると示されています。特に、神経疾患（アルツハイマー、パーキンソン病、ALSなど）、と老化に非常に密接な関連があるとされていますのでアンチエイジング、アルツハイマー予防の観点からもフェロトーシスを予防することが今後注目を浴びてくるでしょう。

フェロトーシスを防ぐ方法

１，余分な鉄を避ける。

フェロトーシスでは、まず鉄が細胞内で増えることから始まりますので、不必要な鉄の過剰摂取は避けるべきです。鉄が不足している貧血持ちの方、妊娠、出産、授乳中の女性、生理の出血が激しい女性は鉄分を補給する必要がありますが、それ以外の方特に、牛肉、豚肉、レバーなどを多く食べる方は、サプリメントなどから余分な鉄分はとらないでください。特に体に炎症反応を起こしている時には鉄を摂ると脂質過酸化反応、フェロトーシスが進行すると考えられます。

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２，脂質の酸化を防ぐ。

ビタミンE、K、コエンザイムQ10は脂質やPUFAが酸化される脂質酸化反応、脂質過酸化反応を止めることでフェロトーシスを防ぐことができます。最近の研究では、コエンザイムQ10とビタミンKの抗酸化能力を高めてフェロトーシスを防ぐフェロトーシス抑制たんぱく質１という酵素が発見されたことで、コエンザイムQ10 とビタミンKの働きが再び注目を浴び始めています。

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３，グルタチオンを増やす。

活性酸素、過酸化脂質を中和するグルタチオンはシステインを摂ることで細胞内で製造することが可能です。またサプリメントで直接グルタチオンを摂ることでも、グルタチオンを増やすことができます。また、ビタミンC、Eは使用済みのグルタチオンをリサイクルするのに必須になります。

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４，活性酸素の発生を防ぐ。

活性酸素の発生源である、酸化食品、毒素（薬、農薬など）、たばこ、お酒、水銀、紫外線、空気汚染、過労を極力避ける、活性酸素を低減する抗酸化物質を多く摂ることが、フェロトーシスを進行させないためには重要です。抗酸化物質の代表としては、ビタミンC、E、バイオフラボノイドなどがあります。

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フェロトーシスの意外な利用法

最近の研究ではこの劇薬のフェロトーシスをわざと引き起こして、ガン細胞を殺す治療に使う研究が盛んに行われています。実際にErastinという物質にはシステインの細胞への吸収をブロックすることで細胞内グルタチオンを枯渇させフェロトーシスを誘導することが確認されています。他にも、グルタチオンペルオキシダーゼの働きをブロックすることでフェロトーシスを誘導する研究が行われています。

人工的にフェロトーシスを誘発することがガンに有効な治療法になるかもしれませんが、抗酸化物質を摂らないということは、酸化ダメージを多く受けてガン化の始まりにもつながりますので、健康維持の為には抗酸化物質を十分摂ってください。

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また過剰に鉄を摂取することは活性酸素を増加することで発ガンにも関与していると考えられていますし、鉄の過剰摂取は命の危険になることもありますので、自己判断で鉄を過剰摂取するようなことは絶対やめてください。

フェロトーシスはまだ研究が始められてたばかりの分野ですので、研究が進むにつれてもっと詳しいことが分かってくるでしょう。

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https://drsuppleusa.com/?pid=134502845

 

参照　https://www.cell.com/fulltext/S0092-8674(12)00520-X,　https://www.nature.com/articles/s41419-020-2298-2,　https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/03/press20210330-01-domino.html,　https://www.nature.com/articles/s41586-022-05022-3,　https://www.dojindo.co.jp/letterj/162/review/01.html,　https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0225931,