【フォルスコリン(Forskolin)】　～脂肪を溶解？ある成分の神話と真実～

今から数年前のこと、アメリカの某健康情報TV番組内で、筋肉を維持したまま脂肪だけを落とす「奇跡を起こす(lightning in a bottle)」「ミラクルな花(miracle flower)」として、ある植物由来成分が紹介されました。この番組のホストを務めるのは、アメリカで“超”がつくほど有名かつ影響力のある医師。そんな彼が絶賛するのですから、この放映以降、その成分はダイエッターにとっての期待の星として一気に注目を集めることとなりました。それがフォルスコリンです。筋肉量を減らすことなく脂肪を溶かす、運動をしなくても痩せる、お腹周りのブヨブヨもあっという間にスッキリ──　それが事実ならば、これほど理想的な減量方法はありませんが・・・。さてさて、真実はいかに？

フォルスコリンとは？

タイ、ネパール、インドなどに自生するシソ科の多年草コレウス・フォルスコリ(Coleus forskohlii)。これらの地域では滋養強壮剤として根の部分が煎じて飲まれたり、インド伝統医学のアーユルヴェーダでも心臓や呼吸器の疾患、そして皮膚トラブルなどの治療薬として用いられてきました。このコレウス・フォルスコリの根に含まれる成分がフォルスコリンです。

フォルスコリンの効果効能

♦ 呼吸器系の健康/喘息の治療に

伝統医学において、コレウス・フォルスコリは喘息や呼吸障害の症状緩和に用いられてきたハーブです。フォルスコリンが細気管支の拡張に携わるので呼吸がしやすくなり、肺気量も向上します。現在、喘息の治療にはクロモグリク酸やベクロメタゾン（ステロイド）を有効成分とする薬品が使われますが、複数の研究により、フォルスコリンはクロモグリク酸より症状改善効果が高く、またベクロメタゾンとも大差がないとの結果が出ています。フォルスコリンという身体に優しい自然の成分で、喘息の改善が可能というのは嬉しいですね。

♦ 血圧の正常化に
伝統医療では、コレウス・フォルスコリ高血圧症を含む心臓疾患にも利用されました。実際、インドで行われた研究でも、コレウス・フォルスコリ抽出物の内服によって試験者の75%以上に血圧の低下が確認されています。

♦ ガン予防への期待

フォルスコリンには、特定の種類のがんのリスクを下げる効果があるかもしれません。ある研究では、フォルスコリンによって活性化されたプロテインホスファターゼ2(PP2A)と呼ばれる酵素が、直腸がん細胞に対する抗腫瘍作用・増殖抑制作用を有することが示されました。また、フォルスコリンが多発性骨髄腫のガン細胞をアポトーシス（細胞死）に誘導したという研究報告もあります。

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♦ 緑内障の進行を抑える/緑内障の予防
緑内障の症状もフォルスコリンによって効果的かつ自然に改善できる可能性があります。イタリアで行われた研究によると、眼圧上昇による視野障害をもつ緑内障患者にフォルスコリンやルチンなどを配合したサプリメントを経口摂取させたところ、眼圧低下の効果が見られました。

♦ アルツハイマー症の治療への期待

フォルスコリンとアルツハイマー病の関連性に関する研究は始まったばかりですが、ラットを用いた研究で、フォルスコリンがアルツハイマー病の原因と考えられる脳内のプラークや炎症活性を低下させることが示されています。

フォルスコリンは脂肪を分解する魔法の成分か？

いよいよ本題！フォルスコリンは脂質代謝にも影響を与えますが、どれほどの痩身効果があるでしょうか？ここで、フォルスコリンと減量の関連性について行われた3つの研究内容をご紹介します。

≪ 実施された研究と結果 ≫

♦ 肥満男性グループに実施したテスト
コレウス・フォルスコリ抽出物（フォルスコリン10%含有）250mg を1日2回、12週間経口摂取させたところ、体重変化なし、体脂肪の減少、骨量の増加、血中遊離テストステロンの増加がみられました。

♦ 肥満女性グループに実施したテスト
摂取内容、摂取期間は男性グループと一緒。その結果は・・・　体重変化なし、体脂肪変化なし、代謝マーカー・血中脂質・テストステロン値の変化なし。疲労感、空腹感、満腹感は低下。

♦ ラットを用いたテスト
10週間、“体重を大いに増やすような”食餌に加え、フォルスコリン摂取させたところ、体重の変化はみられませんでした。

■ 結論：セレブ医師がテレビで絶賛するほどのダイエット効果は・・・　答えは「？？？」。

減量には至らなかったものの、男性陣に対しては身体組成に良い影響を及ぼすようです。女性やラットを対象とした研究結果からも、フォルスコリンは体重増加抑制に役立つとも考えられます。しかし、脂肪を洗い流してくれる成分か？ミラクルな痩身効果をもつ成分か？というと、現時点では肯定するのが難しいところです。

奇跡的な痩身効果は期待できずとも、体重増加を防ぐ可能性のあるフォルスコリンをダイエットプランに取り入れるのであれば、食事内容や量に気をつけながら、運動をしてカロリーを消費する“地道なダイエット”と組み合わせて行うのがよいでしょう。

摂取方法

呼吸器系、心血管系、そして目の健康にも有効なフォルスコリンは、サプリメントで摂取することが可能です。

注意点

健康問題をお持ちの方や服用中のお薬がある方は、サプリメントを服用する前に医師にご相談ください。