【自律神経失調症】　病院では何もないと言われているのに体調が優れない

時間や物事に追われ、情報過多社会を生きる私たちの心身は常に疲弊気味。加えて、このコロナ禍で体調不良を訴える人も少なくないでしょう。ところが「体調が優れない、でも検査をしても異常が見つからない」というケースが意外に多いのも事実。そのような状態は“自律神経失調症”と表現されることがあります。自律神経失調症というのは実に謎めいています。症状の現れ方や発症要因も人それぞれ。医学的にも定義や治療法を確立するに至っていないのが実情です。　

自律神経とは？その働き

自律神経は一言でいうと、内臓や血管の働き、代謝・体温・呼吸などを自動的に調整してくれるシステム。この自律神経には「交感神経」と「副交感神経」という2つのサブシステムがあります。時間帯や状況に応じて、この２つは一方が優位になると、もう一方の働きが抑えられるという、シーソーのような関係にあります。

♦ 交感神経　

しばしば車のアクセルに例えられる交感神経は、活動時や緊張時に優位に働く神経。（血液を全身に送り込むために）心拍数や血圧は上昇し、呼吸は早まり、瞳孔が大きく開かれます。また、副腎からアドレナリンが分泌されたり、貯蔵されていたブドウ糖が血中に放出され体内のエネルギーレベルが高まるのも自律神経の働きによるものです。交感神経が優位である時、活動/戦闘のために血液が筋肉へ送られることが優先される分、消化や排泄の機能は鈍くなります。

♦ 副交感神経

一方、副交感神経はブレーキのようなもの。リラックスしている時や睡眠中に優位に働きます。筋肉緊張の緩和、心拍数や血圧の減少、そして呼吸も深く穏やかになります。また、副交感神経が優位になると消化、解毒、排泄、細胞の修復が促されます。

自律神経失調症とは？　

自律神経失調症とは、文字通り自律神経が失調した（バランスが崩れた）状態です。その多くは交感神経が高ぶったままで、副交感神経との切り替えがうまくいかないことによるものです。心身への症状の現れ方は人によって異なります。

♦ 症状例

≪身体症状≫
頭痛、動悸、吐き気、耳鳴り、めまい、胃腸の不調（腹痛・便秘・下痢）、手足の痺れ、慢性疲労、生理不順、食欲不振、不眠など。

≪精神的な症状≫
イライラ、不安、落ち込みなど。

♦ 原因

自律神経のバランスを乱す要因として「ストレス」「生活習慣」などがあります。また「女性」の方が自律神経のバランスを崩しやすい傾向にあるようです。　

• ストレス
  職場でのプレッシャー、人間関係、トラブル、環境の変化などのストレスは交感神経を優位にし続けるので、心身が慢性的な過緊張状態になってしまいます。

• 不規則な生活習慣
  私たちは生まれながら体内時計を持っており、昼夜の変化に合わせて体内の環境を変動させています。朝〜日中は活動するために交感神経の働きが高まる、夜になると副交感神経が優位になり、リラックスして眠りにつきやすくなるというのも、体内時計に準じているから。ですから、夜更かしや昼夜逆転の生活、不規則な食事時間は体内時計を狂わせ、自律神経のリズムを乱してしまうのです。

• 女性であること

女性は（男性に比べて）人間関係や仕事などのストレス、プレッシャーに対する感受性が強く、自律神経のバランスを崩しやすいと考えられます。
また、自律神経をコントロールしている脳の視床下部は、女性ホルモン分泌の司令塔の役割も担っています。このため、妊娠中や更年期における女性ホルモンの変化は自律神経にも影響します。反対に、自律神経のバランスが乱れてしまうと女性ホルモンの分泌に影響し、月経周期の乱れやPMS（月経前症候群）の症状が重くなることがあります。

治療法　

自律神経失調症の症状改善には、まずその本質的な原因を理解することが大切です。

♦ 生活リズムの見直し

今の自分の生活習慣を振り返ってみましょう。夜更かし朝寝坊など、不規則な生活リズムになっていませんか？できるだけ毎日同じ時刻に起床し、就寝することを心がけましょう。起床後に太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされ、適切な生体リズムが生まれます。また、朝食を摂ることも非常に大切です。そして夜は副交感神経を優位にすべく、ややぬるめの湯船にゆっくり浸かってバスタイムを楽しみ、少し暗めにした部屋で軽くストレッチしたり、ヒーリングミュージックを聴いたり、アロマテラピーを用いて心身をリラックスさせることで、心地よい眠りにつくことができます。

♦ カウンセリング

自分でも気づかないうちに溜め込んでいるストレスもあります。あるいはストレスと感じていてもそれを上手く解消できない人もいます。体調不良に至るほどの心理的な要因を探るため、専門家（カウンセラー）の力を借りることは有効な手段です。誰かに話を聞いてもらうだけでも心の重荷が少し軽くなるものです。またカウンセラーとの対話を通して、それまで気づかなかったストレスの元凶を知ることができるかもしれません。　　

♦ 運動習慣を取り入れて

適度な運動は血流を促すだけでなく、気分転換や質の良い睡眠を取るためにもオススメです。ウォーキングやヨガ、ストレッチなど気軽に取り組める運動を日々の習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか？

♦ 深呼吸（腹式呼吸）

深呼吸にはストレス緩和効果があります。息を深く吸いゆっくり吐き出すことで、緊張や活動を促す交感神経を鎮める一方、心身をリラックスさせる副交感神経を刺激することができます。

サプリメントの活用

自律神経のバランスを整えるために、栄養バランスの取れた食事を摂ることは非常に大切です。とはいえ、日々忙しい中、バランスの整った食事を毎食続けるというのも容易ではありません。サプリメントを活用することで、必要な栄養を効率的に補給することが可能です。

カルシウムやマグネシウムは神経伝達の働きを促進するミネラルとして知られていますが、ある研究でマグネシウムには交感神経を抑制する作用があることが示されています。また、神経の働きを正常に保つためにはビタミンB群が必要です。これらを含むマルチビタミンミネラルは自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。

自然療法専門医ドクター小澤開発の「ニューロ・ニュートリエント」サプリメント は、脳、神経、精神の働きをトータルにサポートし、自律神経失調症の予防・改善に有効です

 

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注意点

「自律神経失調症」は英語で autonomic dysfunction や dysautonomiaなどと訳されることがあります。しかし、アメリカにおいて、これらの疾病名は主に自律神経機能不全によって引き起こされる疾患を指します。この中には、体位性頻脈症候群(POTS) 、起立性低血圧、血管迷走神経性失神、さらには多系統萎縮症(MSA)、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(HSAN)、ホームズ・アディー症候群(HAS)などの重篤な疾患なども含まれます。これらの疾患は、日常生活に著しい支障をきたすことも少なくなく、脳神経科などでの詳しい検査や長期治療が必要となります。　　

当記事は、このような自律神経障害疾患ではなく、日本で一般的に「自律神経失調症」と呼ばれている状態に関する内容であることをご了承ください。

Reference: Psychoneuroendocrinology. 2017 Jan;75:44-51. doi: 10.1016/j.psyneuen.2016.10.009. Epub 2016 Oct 14. Anatomy, Autonomic Nervous System,Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2020 Jan-. J Psychosom Res. 2017 Aug;99:105-111. doi: 10.1016/j.jpsychores.2017.06.006. Epub 2017 Jun 9. Hypertension. 1999 Aug;34(2):247-52. doi: 10.1161/01.hyp.34.2.247.