【レンティル】～まめまめしく働く、マメ界の小さな巨人　～

アメリカでは胎児の大きさを野菜や果物にたとえることがあります。例えば、妊娠6週の胎児は「Lentil （レンティル）ぐらい」の大きさだそうです。レンティルとは、学名Lens culinaris、日本ではレンズ豆あるいはヒラマメと呼ばれる、とても小さな豆です。原産は西アジアから地中海にかけての乾燥地帯とされ、食用としての起源は新石器時代まで遡るそうです。

中近東やインドでは古くから料理に欠かせない食材ですが、今では世界の多くの地域で愛好されています。人気の理由の１つとして、簡単に調理できるという点が挙げられます。 それに乾燥レンティルの色や形がおしゃれで、インスタ映えします！さらに、スーパーフードが注目される昨今、健康関連雑誌などで「ベストフードランキング」が実施されると、高い頻度でレンティルがランクインしていることも、この豆の需要が年々高まっている一因です。今回は、見た目の可愛らしさからは想像がつかない抜群の栄養価と健康効果を持つ「マメ界の小さな巨人」、レンティルについて考察します。

レンティルの種類

レンティルは、種類によって色や大きさはさまざま（色：褐色、緑、黒、黄、赤橙など / サイズ：3〜9mm）。扁平で凸状の形をしています。皮付きと皮なしがあり、皮があるものは煮崩れしにくく食べ応えがあります。一方、皮なしのレンティルは煮込むとスープにとろみがつきます。皮つきの方が食物繊維は多いですが、その他の栄養価や味に大きな違いはないので、調理目的に応じて使い分けしてもよいですね。

どんな栄養があるの？

調理したレンティル1カップあたり： （230カロリー）
タンパク質： 18g （卵３個分に相当！）
食物繊維： 13g
糖質： 3.5g
脂質： 1g以下

この1カップのレンティルには、葉酸が1日に必要な摂取量のなんと90％、マグネシウムは49%、鉄分は37％、リンは36%含まれています。銅、カリウム（ポタシウム）、亜鉛などのミネラル、ビタミンB群も豊富です。

ベジタリアンに不足がちなタンパク質やビタミンB群、ミネラルは、レンティルによって補うことが可能です。一般の方にとっても、この豆が持つ栄養は朗報ですよ。なぜなら、乾燥レンティルはお肉よりも安価。つまり、必要な栄養を経済的に普段の食事に取り入れることができるのです。

レンティルの健康効果

タンパク質、鉄分、ビタミンB群などは、疲労回復、貧血、美肌、免疫力を高める効果があります。また、レンティルは水溶性・不溶性両方の食物繊維を豊富に含むので、普段から便秘にお悩みの方にはぴったりの食材です。レンティルに含まれる豊かな栄養は、私たちの体内でまめまめしく働き、身体を健やかに保ってくれます。以下にその例をご紹介しますね。

♦ 消化器官の改善
レンティルの食物繊維はプレバイオティクスの役割も果たします。　腸内環境や消化機能を整えるので、過敏性腸症候群、腸炎、憩室炎などの胃腸疾患を予防することにつながります。

♦ 妊娠中の健康
葉酸には、生まれてくる赤ちゃんの脳や神経管閉鎖障害の発症リスクを低減する効果があります。また葉酸を適切に摂取することで、早産になる可能性を低くします。

♦ ダイエットの強い味方
豊富な食物繊維とタンパク質のおかげで腹持ちが良くなり、間食の欲求を抑えることができます。お肉の代替食として使えば、（肉の脂身に含まれる）飽和脂肪酸をカットすることもできますね。

♦ 心臓の健康を守る
レンティルに含まれる水溶性食物繊維は、悪玉コレステロールを吸着・排出する働きがあります。　こうして血管内のプラーク（粥腫）が作られるのを防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを著しく下げることにつながります。

他の栄養成分にも注目してください。低脂質、低塩分、葉酸、カリウム（ポタシウム）、マグネシウムは血圧を正常にする効果があります。葉酸は心臓疾患のリスクファクターとして知られるホモシステインを下げ、カリウム（ポタシウム）は血流を促し、適切な酸素と栄養分が体内中に運びます。

♦ 体のアルカリ化＆ pH バランス
糖分や脂肪分の多い加工食品を摂取し続け、消化機能が極度に酸性化すると、腸内細菌のバランスが崩れ、その結果身体のあちらこちらに不調がでてきます。レンティルはアルカリ化タンパク質を多く食物で、体のpH値のバランスをとる働きをします。酸性化した胃腸環境と闘い、腸内細菌のバランスを整えることで、栄養吸収を良くし、胃腸疾患をはじめとする多くの病気を予防することにつながります。

♦ 血糖値の安定化
レンティルには血糖値を安定させる作用があります。疲労や気分のムラなどはもちろん、糖尿病やインスリン耐性、低血糖症のような重篤な疾病を防ぐ働きがあります。

♦ 免疫機能アップ
これまでの数々の研究で、食物繊維には、便秘を予防する以外に、免疫機能や消化機能の改善に深く関わっていることがわかっています。つまり、食物繊維を積極的に摂取することで、心臓疾患、ガン、糖尿病、関節炎、様々な消化障害の発症率を下げるのです。加えてレンティルに含まれる鉄、葉酸、亜鉛、マグネシウムなどの重要なミネラルも、免疫機能を強化する働きをもっています。

食べ方いろいろ

既に調理されたものや缶詰を使えば時間や手間を省くことは可能です。しかし、多くのマメ類とは異なり、レンティルは水に戻す必要もなく、簡単に調理できます。スープに入れるだけでも良いですし、インターネットでもいろいろなレシピが出ていますので、気軽にトライしてみてください。

また、レンティルは発芽させることも可能です。乾燥レンティルをよく洗った後、2〜3日浸水させておくとニョキニョキと芽がでてきます。（浸水期間中は、時々水を取り替えてくださいね。）　発芽レンティルは必須アミノ酸を有するので、筋肉を作ったり、身体機能をスムーズにするのに有効です。

注意点

マメ類は体内で発酵する過程でガスが発生しますので、食べ過ぎると膨張感や不快感を引き起こすことがあります。

また、マメ類はシュウ酸化合物を有します。シュウ酸は結石の材料になりますので、結石体質の方は摂取前に主治医にご相談ください。

タンパク質を過剰摂取すると、過剰分が排出される際に腎臓に負担がかかります。これが長期に渡ると腎臓の機能にダメージを与えかねません。　何事も適度が一番ですね。