ホアハウンドの効果効能は？～風邪の季節、長引く咳によく効く苦〜いハーブ～

ホアハウンド(Horehound)はヨーロッパ、北アフリカ、西南・中央アジアを原産とするシソ科の多年草。数あるハーブの中でも苦味の強い薬草で、去痰や鎮咳作用を持つ生薬として古くから用いられてきました。呼吸器系疾患に対するホアハウンドの薬効については、古代ローマの学者ケルススが著書「医学論」に書き残していますが、それから2000年以上経過した今なお、ホアハウンドは世界有数のシェアを誇る咳止めハーブドロップの原材料として利用されています。

ますます寒く、そして空気がさらに乾燥するこれからの季節は風邪を引きやすくなります。風邪対策のひとつとして、時代を超えて愛用されている咳止めハーブ、ホアハウンドに注目してみませんか？

英語名の由来

「ホアハウンド」という英語名の由来には諸説あります。ひとつは、エジプトの空と光の神「ホルス」が語源という説。ホアハウンドは古代エジプトで咳止めとして使われ、ファラオ（王）たちの薬箱にも常備されていたハーブです。神聖な神の名を付けるほど、当時からこのハーブの治癒効果は誰もが認めるものだったのかもしれません。そして、もう一つの説は、英語の古語で「グレーがかった白毛」を意味するhār が語源であるというもの。確かにホアハウンドの茎・葉は産毛のような白柔毛で覆われています。

なお、和名はニガハッカ（苦薄荷）。リズム感がよい上、「苦い！」というホアハウンドの最たる特徴を示していて、わかりやすいですね。

ホアハウンドには2種類ある!

ホアハウンドにはホワイト・ホアハウンド（学名Marrubium vulgare）とブラック・ホアハウンド（学名 Ballota nigra） の2種類があります。どちらも薬用目的で使われるハーブですが、植物分類上では別属です。ハーブの世界でホアハウンドと言う場合、白い小花をつけるホワイト・ホアハウンドを指すことが一般的です。当コラムで取り上げているのも、ホワイト・ホアハウンドに関するものです。

なお、ブラック・ホアハウンドについて少し触れておくと、こちらも茎・葉共に白柔毛が密集していますが、花は紫色、茎は深緑〜茶、そしてホワイト種に比べ匂いがキツイという特徴があります。

ホアハウンドに含まれる有効成分

ビタミンC、フラボノイド、アルカロイド、サポニン、ステロール、タンニン、モノテルペン、ジテルペンなどの天然有機化合物、そして苦味成分のマルビインが含まれています。

ホアハウンドの効果・効能

♦ 鎮痙＆鎮痛作用
ホアハウンドには内臓や筋肉の痙攣を抑え（緩め）、痛みを和らげる作用があります。腹痛、あるいは子宮の筋肉の収縮や痙攣で起こる生理痛などにも有効です。身体だけではありません。ホアハウンドのお茶のリラックス効果で、月経時のイライラ気分も鎮まりますよ。

♦ 咳や痰を抑制

ホアハウンドの苦味成分マルビインには去痰作用があります。鎮痙作用が咳を鎮め、去痰作用が痰や粘液を抑制するというダブル効果が、ホアハウンドが優秀な咳止めハーブと呼ばれる所以です。

♦ 抗炎症作用
ホアハウンドには抗炎症作用があり、喉の痛みや呼吸管（気道）の炎症を鎮めます。ホアハウンドの「鎮咳・去痰・消炎」のトリプルアタックにより、気管支炎の改善をもたらします。

♦ 消化サポート＆食欲増進
マルビインの苦味が唾液と胃液の分泌を促すことで、食物の分解と消化をサポートし、食欲を刺激します。

♦ 血管拡張作用
ホアハウンドには血管拡張作用があり、血管や動脈の緊張を緩和し、心臓血管系のストレスレベルを下げる働きをします。血行促進、血圧の安定化、心臓の負担軽減にもつながります。

♦ 血糖値やコレステロール値の改善

ある研究で、ホアハウンドを定期的に摂取することで血糖値や総コレステロール値が下がるとの結果が出ています。総コレステロールに含まれる悪玉(LDL)コレステロールも減少するので、動脈硬化などの原因となる血管プラークの堆積を予防することが可能になります。また研究者の間では、ホアハウンドが大量のグルコースを効果的に処理する能力を有しているとの意見もあり、糖尿病の予防・治療効果については今後の研究の進展が期待されるところです。

♦ 免疫機能のお助けマン
ホアハウンドには抗菌・抗ウイルス作用があります。病原菌そのものを撃退するので、その分、免疫機能にかかる負担は軽減されます。つまり、免疫機能はより深刻なトラブルに対抗するために準備（あるいはパワー温存）が可能なのです。

♦ ガンの予防に
ホアハウンドはビタミンC、フラボノイドなどの抗酸化物質を含んでいます。これらの物質が、健康な細胞をガン細胞に突然変異させるフリーラジカルを抑制するため、ホアハウンドにはガン予防効果が期待されます。

使い方

自然食料品店などでパウダー、カプセル、チンキ、お茶（ティーバッグ）の形で販売されています。また、咳が続く時は、原材料にホアハウンドが含まれている咳止めハーブドロップを舐めるのもオススメです。

フレッシュ（生）、あるいはドライ（乾燥）なホアハウンドを入手できれば、お茶として煎じたり、咳止めドロップやシロップを手作りすることもできます。ただし、ホアハウンド自体はとても苦いので、はちみつなどを加えるとよいでしょう。

注意点

健康な方が適切な量を摂取すれば安全とされますが、過剰摂取により吐き気や不整脈を起こすことがあります。

ホアハウンドは通経を促して流産を誘発する恐れがありますので、妊娠中の摂取はお控えください。

また、ホアハウンドには胃酸分泌促進作用、血圧や血糖値を下げる作用などがあります。消化性潰瘍や胃炎を患っている方、降圧剤を服用している方、血糖コントロール薬を服用している方は、摂取をお控えください。

その他健康上に問題のある方は、事前に主治医にご相談ください。