【チャービル】　～ 食通のローマ人がヨーロッパに広めた「美食家のパセリ」 ～

万人に愛されるイタリア料理 ── そんな偉大な食文化を守り続けるイタリア人の食に対するこだわりと情熱のルーツは古代ローマにありました！　エジプト、ギリシャ、中国、ローマなどでは昔からハーブを生薬として使う習慣がありましたが、中でもローマは医療用としてだけでなく、食べ物の風味をより豊かにする重要なファクターとしてハーブを好んで用いていたそうです。ローマ帝国が領土を拡大していく中、ローマ軍団は駐屯した先々でハーブを栽培したというほど、ローマの人たちにとってハーブは欠かせないものでした。チャービルもまた、ローマ軍の遠征とともにヨーロッパ各地に広められたハーブのひとつです。

チャービルとは

チャービル（学名Anthriscus cerefolium）は、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方を原産とするセリ科の一年草。今ではフランス料理には欠かせないハーブのひとつとなっており、“みじん切りしたハーブ”を意味する「フィーヌゼルブ」というフランスの伝統的ハーブミックスにも使われています。パセリに似ていることからフレンチパセリと呼ばれますが、パセリよりも洗練された外見と香りから「美食家のパセリ」と称されることも。美しい淡緑色、レースのような柔らかい葉、そして上品な甘い香りが特徴です。優しい風味なので卵料理とも大変相性が良く、お料理やお菓子の飾りとしても使われます。

民間薬としてのチャービル

その芳しい香りから古代ギリシャで「喜びの葉」と呼ばれたチャービル。このハーブは、ヨーロッパでは古くから消化器疾患、湿疹、痛風、腎結石、むくみ、怪我、関節痛、目のトラブルなど、実に多くの症状に対する生薬として利用されていました。ローマ帝国の軍人にして博物学者だった大プリニウスはしゃっくり止めとしてチャービルを推奨し、中世の著名ハーバリストであるニコラス・カルペパーもチャービルが持つ胃を温める作用に言及しています。また、イランの伝統療法では、野生チャービルの根の浸出液が胃痛、けいれん、しゃっくりに有効とされていたそうです。

チャービルに含まれる有効成分

カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、ビタミンA、リボフラビン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンCなどのミネラルやビタミンに加え、フラボノイド類、クマリン類、エストラゴールなどのフィトケミカルが含まれています。

チャービルの効果・効能

現在、チャービルの効能を「科学的」に実証する研究やデータはまだ十分ではありません。しかし、生薬としての長い歴史と実績をもつチャービルは、以下のような効果が期待できます。

♦ 抗酸化作用 / ガンや慢性疾患の予防に
成分分析や動物を用いた研究の結果から、チャービルには抗酸化作用を有することが示されています。酸化ストレスから細胞や組織を守り、炎症を抑えることで、ガン、心血管疾患、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、白内障、そして黄斑変性など、様々な疾患の発症リスクを軽減します。

♦ 心血管の健康に
ホウレンソウやビーツ、セロリ等と同様、チャービルには硝酸塩が含まれています。硝酸塩は体内で一酸化窒素(NO)に変わり、この一酸化窒素が血管拡張、血行促進、そして血管をしなやかにする働きをします。一酸化窒素の原料となる硝酸塩をチャービルなどの野菜から補うことは、心血管の健康を保つためにも有益です。

♦ 消化促進効果
チャービルを含むセリ科の野菜は、古くから消化不良に対するナチュラルレメディーとして利用されてきました。食欲増進、消化促進、腸内のガスを出す駆風作用により、胃もたれ、膨満感、胃けいれんなどの症状を穏やかに緩和します。

♦ デトックス効果 / むくみ予防にも
チャービルには利尿作用もあります。体内に溜まった老廃物、毒素、余分な水分を排出します。

♦ 呼吸器系の健康に
去痰作用があることでも知られるチャービルは、風邪や咳の症状緩和に有効なハーブとして古くから親しまれています。

♦ リラックス効果
チャービルに含まれるアピイン（フラボノイドの一種）という芳香成分には精神を安定させる作用があり、イライラ気分や精神的ストレスを和らげます。

使い方

香り、風味、そして健康効果の面でも、フレッシュ（生）なチャービルを使うのが一番！加熱すると風味が落ちるので、火からおろす直前に加えるか、料理の仕上げとして添えるのがよいでしょう。卵料理、肉・魚料理、サラダ、スープ、ソース、さらにデザートまで、どんなお料理やお菓子にもマッチします。チャービルを添えるだけで、お料理やお菓子のおしゃれ度がアップするだけでなく、しっかり栄養も補給できちゃいます。

チャービルはデリケートなので、冷蔵保存する場合は湿らせたペーパータオルで包むなどの手間が必要になります。

注意点

安全な食品とされていますが、パセリ類に対するアレルギーがある方はお控えください。