【ローズ・ハイドロソル(Rose Hydrosol)】って何？～効果、使い方、選び方までご紹介～

数ある精油の中でも非常に高価なローズ・オットー（ローズ精油）。原料となるダマスク・ローズの花はひとつひとつ手摘みで収穫され、抽出できる精油量はごくわずか。大変貴重な精油なのです。5mLボトル分のローズ・オットーを抽出するためには約1万本のバラが必要だといわれます。つまり、たった1滴(0.05mL) に約100本のバラが使われている計算になります。

この精油の抽出過程で、併せて採れるのがローズ・ハイドロソルです。

ハイドロソルとは？　

精油を抽出する方法のひとつに「水蒸気蒸留法」というものがあります。熱い蒸気で植物の芳香成分を気化させ、その後冷やすと、油と水の二層の液体が出来上がります。この液体の上に浮いた油の部分は精油（エッセンシャルオイル）、下の部分は芳香蒸留水（ハイドロソル）になります。ハイドロソルにも芳香成分が少し溶け込んでいます。なお、ハイドロソルはフローラルウォーターとも呼ばれます。

植物の成分が高濃度に凝縮された精油は薬理作用がとても強く、取り扱いには十分な注意が必要です。一方、芳香成分の濃度が非常に低いハイドロソルは薬理作用が穏やかで安全性が高いという利点があります。

ハイドロソルは：
・精油と同じく、100%天然。
・小さなお子さんからご年配の方、妊娠中の方も安心して使用できる。
・1日に何度でも使用できる。
・また長期使用も可能。
・肌に直接使っても安全（希釈不要）

ハイドロソルにはラベンダー、オレンジフラワー、カモミールなど様々な種類がありますが、ローズ・オットーの上品な香りと効能を継承するローズ・ハイドロソルはオススメの一品です。何より、ローズ・ハイドロソルはローズ・オットー（精油）に比べ、お財布に優しいのが嬉しいですね。

豆知識：ハイドロソルの歴史

蒸留の歴史は遡ること紀元前5000年！インダス文明の出土品から最古の蒸留器とおぼしき陶器が出土されています。

古代ギリシャやヘレニズムを起源とする錬金術がイスラム世界に伝わると、そこで錬金術の装置として蒸留技術が発展し、西暦9世紀にはアランビックと呼ばれる蒸留器が発明されました。

ペルシャの医師・科学者・哲学者であったアヴィセンナ（イブン・スィーナー / 980〜1037）が水蒸気蒸留によって植物から精油を取り出す方法を確立したとする説がありますが、実際のところ、彼が活躍する時代より前からバラ蒸留水・バラ油・バラペースト（蜂蜜や砂糖とブレンドされたジャムのようなもの）が胃痛、潰瘍、肝疾患、喉の痛み、発熱、創傷などの治療に用いられていたようです。

ローズ・ハイドロソルの効能

水蒸気蒸留法の確立者か否かは別として、アヴィセンナは医師・科学者として、ローズの香りが持つ心臓や脳、精神への有益な効能を高く評価し、バラ蒸留水には失神や頻拍に対する効果、鎮静効果、そして理解力・記憶力アップ効果があると称賛したそうです。

天然有機栽培（オーガニック）のダマスク・ローズを原料とし添加物を一切含まないピュアなローズ・ハイドロソルには、以下のような利点や効能があります。

♦ スキンケア・ヘアケアに活用！

ローズ・ハイドロソルは保湿作用、そして穏やかな収れん作用があり、お肌のキメを整え毛穴を引き締めます。さらにお肌のpHバランスを整える効果、皮脂バランスを整える効果、優れた抗酸化特性、そして抗炎症作用や抗菌性も兼ね備えているので、ニキビ、湿疹などの赤みや痒みを抑える効果も期待できます。乾燥肌〜脂性肌、敏感肌、年齢肌まで全ての肌質に対応可。

また、ヘアケアにも有効です。頭皮を健やかにし、毛髪の保湿に役立ちます。

♦ 喉の痛みや炎症に

喉の痛みや炎症に対し、ローズ・ハイドロソルをうがいに使用したり、喉スプレーとして利用できます。これはローズ・ハイドロソルの抗炎症作用と抗菌作用に因るものです。　

♦ 目の痒みに

抗菌、抗炎症などの作用を有するローズ・ハイドロソルは、アレルギーによる目の痒みや結膜炎などの炎症性眼疾患の症状緩和にも役立ちます。目にスプレーしてあげると、痒みが和らぎます。

ローズ・ハイドロソルは、ユナニ医学（イスラム文化圏の伝統医学）点眼剤の原料生薬としても用いられています。動物を用いた研究によると、ローズ・ハイドロソルを含有するユナニ点眼剤には強力な抗炎症作用と抗ヒスタミン作用が認められ、結膜炎などの感染症に対する有効性が確認されています。

♦ 心への作用

マウスを用いた研究では、ダマスク・ローズの抽出物による中枢神経系のリラックス効果が示されています。このようにローズは抗うつ・抗不安効果をもたらします。ローズ・ハイドロソルはルームフレグランスとして利用すれば気分が明るくなり、またリネンスプレーとして利用するとリラックス効果により良質な睡眠をもたらします。

♦ 切り傷ややけどに

ローズ・ハイドロソルは殺菌、抗菌、抗炎症作用があるため、傷の緩和と治癒、そして感染症予防にもなります。

♦ 女性のお悩みに

ローズ自体には女性ホルモンのバランスを整え、PMS（月経前症候群）や生理痛の緩和、月経周期の正常化、更年期症状の緩和などの効果があります。そして、直接肌に塗布やスプレーができるローズ・ハイドロソルは、デリケートゾーンの痒みや炎症の軽減にも有効です。

♦ 消化不良を改善する可能性

民間療法では、ローズ・ハイドロソルは胃腸のトラブルに対する内服薬としても用いられていました。消化性潰瘍の治療、そして胆汁分泌改善の可能性を示す報告もあります。

♦ 外用＆内服も可能！

ピュアオーガニック＆無添加の芳香蒸留水は、外用だけでなく経口摂取もできます。デザートやヨーグルト、スムージー、ドレッシングの香りづけにも使えそうですね。

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要注意！ローズ・ハイドロソルとローズウォーター

ローズ・ハイドロソルは、一般的にローズウォーターという名称でも親しまれています。しかし、ローズウォーターと呼ばれるものには、ローズ・ハイドロソルのようなピュアな芳香蒸留水だけでなく、精油などの香料を加えて作られたアロマウォーターのようなものもあります。後者はバラの華やかな香りを楽しむことはできますが、香料、着色料、パラベン、アルコールなどの添加物が入っていることがあり、前述の効能は期待できません。まして目や口内に入れるのは危険です。

ローズウォーターと称される製品の中で、正しいローズ・ハイドロソルを見つけるポイントは次の通りです。

• 商品ラベルに記載されている成分リストを見て、精油と水の混合物ではなく、芳香蒸留水（ハイドロソル）そのものであるかどうか確認しましょう。原料となっている植物の学名が記載されていれば、それもチェックしましょう。
• 真のローズ・ハイドロソルはほのかに香る程度です。反して、加工品は香りが強く、場合によってはピンク色に着色されていることもあります。
• 仮に芳香蒸留水（ハイドロソル）と書かれていても、香料、着色料、保存料、パラベン、アルコールなどの添加物が含まれていないか確認してください。

高品質のローズ・ハイドロソルは有機栽培（オーガニック）で育ったバラを原料とし、かつ無添加です。防腐剤や保存料が含まれていないため、開封後は冷蔵庫で保管してください。

Reference:NPC 2017Vol. 12No. 8 1327 – 1330 J Inflamm (Lond). 2011 Oct 13;8(1):27. doi: 10.1186/1476-9255-8-27. Iran J Basic Med Sci. 2011 Jul;14(4):295-307. Ophthalmol Eye Dis. 2010 Mar 10;2:17-22. doi: 10.4137/oed.s3612. Print 2010.