【免疫グロブリンIgG】　～ 免疫システムで重要な役割を担う抗体の主力 ～

私たちの体には、外部から侵入したウイルスや細菌などの病原体を異物として認識し、それを攻撃・退治・排除するためのシステムが備わっています。このシステムを免疫といいます。今回は、免疫システムの一端を担う「抗体」に関するお話です。「抗体」を理解するには、まず免疫システムの大まかな仕組みをおさらいしておきましょう。

２つの免疫機構で構成されている免疫システム

免疫システムは「自然免疫（先天性免疫）」と「獲得免疫（後天性免疫）」という２つの免疫機構で構成されています。体内に侵入した病原体などの異物に対し、まずは「自然免疫」が攻撃をしかけ、そこで排除できなかったものには「獲得免疫」で応戦するという仕組みになっています。

生まれつき体に備わっている「自然免疫」は、病原体が侵入してきたら“即時”に反応します。ここでは好中球、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞などの免疫細胞が病原体の排除に積極的に関与します。

一方、「獲得免疫」では、自然免疫で排除できなかった病原体に対して、一部の免疫細胞が直接攻撃したり、病原体の特徴に合わせた武器（＝抗体）を作り出して対抗します。獲得免疫機構では主にT細胞やB細胞といったリンパ球が活躍します。抗体は作られるまで数日以上を要しますが、一度侵入した病原体の情報を記憶するため、同じ病原体が再度侵入した際には素早く対応します。

自然免疫から獲得免疫への情報リレーによって生み出される「抗体」

自然免疫機構で得られた病原菌情報は、樹状細胞やマクロファージを介して、獲得免疫機構のヘルパーT細胞に伝えられます。免疫の司令塔ともいわれるヘルパーT細胞は、受け取った情報を元に、キラーT細胞を活性化させる一方、病原菌に対抗できる武器（＝抗体）を作るようB細胞に指令を出します。

免疫グロブリン（抗体）

前述のプロセスを経てB細胞から放出される抗体は、免疫グロブリン (Immunoglobulin / Ig) とも呼ばれます。免疫グロブリンは構造や働きの違いによって、IgG、IgM、IgA IgD、IgEの5つに分類されます。中でも、IgGは全免疫グロブリンの75〜80%を占め、血清抗体でも圧倒的な存在感を放っています。加えて、IgGは他の免疫グロブリンに比べて半減期が著しく長い、つまり体内にとどまる時間が長いという特徴があります。このようなことから、IgGは抗体の主力として、多くの免疫反応に関与します。

豆知識：IgGは母から子への贈り物

IgGは免疫グロブリンの中では唯一胎盤を通過でき、母親から胎児にシェアされます。生後６ヶ月ごろまで、この母体由来のIgGが赤ちゃんを感染症から守ります。（母親から移行されたIgGは生後半年ごろまでにはなくなります。それ以降は赤ちゃん自身の免疫機能が抗体を作ります。）

免疫グロブリンIgGのはたらき

免疫グロブリン（抗体）自体には病原菌を破壊する働きはありませんが、補助的に病原菌を排除します。IgGに関しては、以下のような作用で免疫の一端を担っています。

♦　中和作用

病原菌に結合し、それらの感染力や毒性を無力化（＝中和）します。

♦　オプソニン作用

IgGと結合した病原菌は、貪食細胞（マクロファージや好中球などの食細胞性の免疫細胞）に取り込まれやすくなります。これをオプソニン効果と呼びます。わかりやすい例えとして、よく言われるのが、病原菌＝食べ物、IgG＝調味料というもの。食べ物が美味しく味付けされれば、食がどんどん進みますよね。

♦　補体の活性化

血液中には、補体と呼ばれるタンパク質の一種が存在しています。IgGが病原菌と結合すると、近くにいる補体が活性化し、最終的には病原菌の細胞膜に穴を開けて死滅させます。

免疫グロブリンIgGの効果

前述のようなはたらきをもつIgGは、免疫機能の正常化や胃腸症状の改善に有効です。

♦　胃腸の健康を保つ

本来、腸の粘膜には、有害物質を通さないバリア機能があります。ところが、偏食・アルコール過剰摂取・喫煙・薬剤・ストレス・食物アレルギーなどによって、腸内細菌のバランスが乱れ、腸のバリア機能はダメージを負います。例えば、アルコール過剰摂取が及ぼす影響のひとつとして、悪玉菌と言われる腸内のグラム陰性菌（大腸菌や緑膿菌など）とそれらが放出する毒素を増やすばかりか、毒素の腸管透過性亢進を招く要因となると報告されています。毒素が腸のバリアを通過して全身に移行すると、他の臓器に炎症を引き起こすなどの悪影響を及ぼします。

IgGは胃腸管内の悪玉菌や毒素と結合し、これらを無毒化・排除します。このように、腸のバリア機能にダメージを与える誘因物質を取り除くことは、腸の健康には極めて重要です。

♦　免疫システムの改善

腸はバリア機能を備えているだけでなく、免疫細胞の約60〜70%が集中しており、体内最大の免疫器官といわれています。そのため、腸の健康に寄与するIgGは、免疫システムにとっても重要です。

HIV感染の合併症として腸炎を患う8名に牛血清免疫グロブリン(SBI) 2.5グラムを1日2回経口摂取させた非盲検試験では、8週間後、参加者全員に1日の排便回数の減少と便の硬さの改善がみられたほか、十二指腸粘膜のCD4陽性リンパ球（免疫の司令塔であるヘルパーT細胞）の数が有意に増加しました。この結果は、免疫グロブリンには、十二指腸の吸収機能改善とともに、免疫機能の再構築効果があることを示しています。

♦　カンジダ菌やSIBO治療時に起こるダイオフの軽減

腸内に増えすぎたカンジダ菌や悪玉菌を一気に駆除すると、一時的に頭痛や極度の疲労、体調不良が出現することがあります。これをダイオフと呼びます。ダイオフは、菌が死滅する際に放出する毒素や、死滅した菌の一部と免疫細胞が過剰反応することに起因するといわれます。ダイオフは一種の好転反応ですが、その症状に耐えきれず、除菌治療を中断してしまう人もいます。

IgGは悪玉菌や毒素と結合することで体内に吸収されることを妨げるため、ダイオフを大幅に軽減することができます。

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免疫グロブリンIgG の補給はこのような症状に有効

• リウマチ、ルーペスなどの自己免疫疾患
• 免疫力が弱い
• 胃腸が荒れている
• リーキーガット
• カンジダや腸内細菌異常増殖症候群(SIBO)によるダイオフの予防

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免疫グロブリンは血液や体液中にあって抗体としての機能と構造を持つタンパク質の事。免疫グロブリンの中でもIgGは、最も多く血液中に存在しています。免疫グロブリンIgGは白血球の働きを助けたり、ウイルス、細菌、カビが出す毒素と結合して無毒化する効果があります。
https://drsuppleusa.com/?pid=143856036

 

免疫グロブリンIgGの欠乏

IgG欠損とは体内でIgGが十分に作られない症状です。原因の多くは遺伝的なものですが、薬剤や放射線治療がきっかけで引き起こされる後天的なものもあります。いずれにしても、IgG欠損症状では、呼吸器系・消化器系・耳鼻咽喉科系の感染症にかかりやすいといわれます。また、感染症に対するワクチン接種を行なっても十分な効果が得られないこともあります。 このような免疫不全症状に対しては、医療機関にて原因の特定や予防法を講じることが大切です。医療機関では、症状や重症度に応じ、抗菌薬や免疫グロブリン製剤を使った感染症予防や治療が行われます。

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Reference: Janeway CA Jr, Travers P, Walport M, et al. New York: Garland Science; 2001. Essays Biochem . 2016 Oct 31;60(3):275-301. doi: 10.1042/EBC20160017. https://www.uofmhealth.org/health-library/hw41342 Clin Dev Immunol . 2012;2012:985646. doi: 10.1155/2012/985646. Epub 2011 Oct 1. Alcohol . 2008 Aug;42(5):349-61. doi: 10.1016/j.alcohol.2008.03.131. Epub 2008 May 27. Pathog Immun . 2019 May 3;4(1):124-146. doi: 10.20411/pai.v4i1.276. eCollection 2019. AIDS . 2013 Sep 10;27(14):2207-17. doi: 10.1097/QAD.0b013e328362e54c.