【生のナッツを食べるときに注意したいことは？】

市販で売られているナッツにはローストしたものと、生のものがあるのはご存知でしょうか。よく生のナッツ類の調理法に「水に浸してから〜〜する」という注意書きを読んだことがあるかもしれませんね。栄養価が高く、ローフードとして人気の生ナッツですが、メリットとデメリットはあります。

生のナッツは何故浸水が必要なの？

ナッツ類や種子類、豆類は種ですから時期が来たらいつか発芽するのですが、いつ発芽するかは自然環境によって異なり、温度や発芽に必要な十分な水分などの条件が揃うと発芽し成長します。その発芽の時期をコントロールしているのが酵素です。暖かくなった春に発芽しなくてはならない種が真冬に発芽したら枯れてしまいますよね。そこで大切な働きをするのが、ナッツ類などに含まれる酵素抑制物質で、その名の通り発芽に必要な酵素の働きを抑制して発芽の時期をコントロールしています。この酵素抑制物質は水によって中和されるので、植えられた後に十分な水分が含まれると酵素が抑制されなくなり発芽が始まります。

私達は食べた物を体内の消化酵素によって消化しますが、酵素抑制物質はこの消化酵素の働きも阻害してしまいます。特に生のナッツ類を沢山食べるとよく消化不良を起こしたりするのは、ナッツ類に含まれる酵素抑制物質が消化酵素を阻害している事とも関連があります。生のナッツ類を食べるメリットは含まれる酵素が摂れるることもありますが、水に浸して酵素抑制物質を中和しない場合には、結果的に体内で酵素抑制物質が酵素を阻害するというデメリットに繋がってしまいます。

この事が生のナッツ類や種子類を生で食べる前に水に浸す大切な理由です。これ以外にもナッツ類を水に浸す事でビタミンＢの増加、グルテンやタンパク質が吸収しやすくするなどのメリットがあります。また、カルシウム、マグネシウム、銅、鉄、特に亜鉛などのミネラル分の吸収を妨げるフィチン酸もまた水に浸す事で減らすことが出来ます。

生のくるみ～健康効果と注意点

ナッツの中でもクルミはオメガ-3の含有量が多く、1/4カップのクルミには2.5gを含んでいるそうです。オメガ-3は心臓病の予防などに効果的な良質の脂肪酸。またビタミンEを始め抗酸化物質も多く、カルシウム、鉄、銅などミネラルも豊富です。ですから、クルミは酸化ストレスからのダメージから守るアンチエイジング効果、脳の働きや認知能力を高める、また喘息、関節炎、骨の健康、乾癬や湿疹など皮膚のトラブルにも良く、コレステロールや血圧のコントロールなど心臓血管の健康もサポートします。実は、眠りのホルモンとして知られるメラトニンも含まれているんです。脳の健康、骨や心臓血管の健康、また眠りのサポートもするクルミは高齢者の方にも役立つナッツのようです。　

浸水方法

クルミも生の場合は、水に浸してから食べる事が大事です。酵素抑制物質を中和する事が目的でもありますが、浸水する事で味もアップします。水に浸すとタンニンも水中に放出され、クルミはより滑らかで口当たりも良くなり渋みもなくなります。時間が無い場合は20分～2、3時間程、そうでない場合は一晩冷蔵庫で浸水しましょう。

注意点

カロリーは高いですから食べ過ぎは体重にも影響を及ぼし、下痢を引き起こす可能性もあります。特にIBS（過敏性腸症候群）の方はご注意ください。一日、28g程度（クルミ半個を12～14個程度）にしましょう。

またアレルギーを発症するリスクもあるので、クルミを食べた後に湿疹や息苦しさを感じたら、即座に医師にご相談ください。

≪併せて読みたい≫
・ナッツ類で一番豊富！くるみに含まれるオメガ3脂肪酸

生のカシューナッツ～健康効果と注意点　

腎臓のような形のカシューナッツ。厳密に言うとナッツではなく、カシューアップルと呼ばれるフルーツの種子です。その為、ナッツアレルギーがあってもカシューナッツは大丈夫という方もいるでしょう。カシューナッツはタンパク質が豊富な上、鉄、亜鉛、マンガン、マグネシウム、リン、セレン、葉酸、ビタミンE、チアミン（ビタミンB1）、ビタミンB6などミネラルやビタミンも豊富に含まれています。更に糖分は低く、食物繊維豊富、タンパク質もたっぷりと含まれています。

カシューナッツは、オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸のレベルが高く（脂質の6割がオレイン酸）、HDL（善玉コレステロール）レベルを上げ、LDL（悪玉コレステロール）及び、血圧を下げる働きが研究で示されており、心臓の健康増進に期待が持たれています。

また糖分が低い事、そして食物繊維は血糖の急激な上昇を抑える働きのある事から、糖尿病の方の味方と言えそうです。

浸水方法

お急ぎの時はお鍋にカシューナッツとカシューナッツの上2～3㎝になるまで水を入れ、中火にかけます。ぐつぐつとなったらすぐに火から下ろし、蓋をして20分程放置したあとに水を切ります。
時間のある時は冷蔵庫で一晩浸水します。

ローストする場合は水をよく切った状態でできますが、保存する時は食品乾燥機を使うかオーブンでしっかり乾燥させます。

注意点
ローストカシューナッツは生の物より抗酸化物質がより多く含まれるという研究もありますが、市販の物はどのような油が使われているかや塩分の問題もあります。生のカシューナッツを購入しご自宅でオイルを使わずにローストするか、安全なオイルを使うとより安心でしょう。

≪併せて読みたい≫
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生のアーモンド～健康効果と注意点

アーモンドは、ミルクやバター、また粉（アーモンドプードル）も人気のナッツです。
というのも、アーモンドはその美味しさだけでなく、一価不飽和脂肪を始め、食物繊維、タンパク質、ビタミンE、マンガン、マグネシウムが豊富で、その他少量ではありますが、銅、リン、ビタミンB2などが含まれている大変ヘルシーな食品だからです。悪玉コレステロール値や血圧を下げる働きは心臓の健康にも効果的ですし、1/4カップのアーモンドは卵より多くのタンパク質を含んでおり、ヴィーガンの方のタンパク源としても人気です。マグネシウムの量も多く、血糖値のコントロールにも役立ちます。ビタミンEなど抗酸化物質も豊富ですから、酸化によるダメージから守る働きも見せてくれます。また、アーモンドの炭水化物レベルは低い上に、高たんぱくで食物繊維が多い事から、腹持ちが良く食欲を抑えてくれます。つい食べ過ぎてしまう方や減量を目指す方にもおすすめです。

実は生アーモンドは生ではない

日本で販売されているアーモンドはほぼカリフォルニア産のものですが、実は、カリフォルニア産のアーモンドは「生」と表記があっても、生ではありません。生アーモンドには発がん性の可能性があり、2007年に低温殺菌をして生アーモンドを消毒する事が義務付けられています。処理されたアーモンドには「生」とラベルをつける事が許されているというわけです。

浸水方法

1カップの生アーモンドを容器に入れ、たっぷりかぶる程の温水と小さじ１の自然塩を入れます。蓋をして8～12時間程経ったら、排水してすすぎ、ペーパータオルなどで押さえながら水気を拭きます。暑い時期の浸水は冷蔵庫に入れましょう。

注意点

アーモンドは大きく二つの種類に分ける事ができます。ビター（苦い）アーモンドとスィートアーモンドです。ビターアーモンドにはアミグダリンと呼ばれる毒素が含まれており、食べるとこの毒素はシアン化水素を含むいくつかの化合物に分解され、死を招く事もある危険な物質です。しかし、通常お店で食品用に販売されているものはスィートアーモンドですから、その心配はありません。

但し、食べ過ぎは便秘や膨満感が起こるリスクの他、体重も増えてしまうかもしれませんので、一日に20～23個を目安に抑えましょう。

また、アレルギー食品リストの上位にランキングされている食品です。アレルギー体質の方はご注意ください。

≪併せて読みたい≫
・健康も美容もサポート！【アーモンドミルク】の健康効果

美味しく食べる方法

ナッツはそのまま食べても美味しいですが、毎日のお料理にも是非加えて頂きたい食品です。ヨーグルトやサラダのトッピングだけでなく、フードプロセッサーで荒く挽いてバーガーパテにしたり、カレーやソース作りなどにも利用できます。お菓子に足したり、粉にしてパンやクッキーを焼くのも良いですね。またナッツバターやミルクも美味しく、お子さんも大好きです。

≪併せて読みたいレシピ≫

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・セレブも実践するローフード！ひまわりの種を使って作ってみよう【ローフードハンバーガーパテ】
・【クリーミー カシュー＆アーモンドバター】
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まとめ

ナッツ類はオメガ-3脂肪酸を始め、抗酸化物質や多くのミネラルやビタミンを含み、心臓病予防、アンチエイジング、美肌などなど沢山の健康や美容効果が期待できる食品です。生の場合は浸水する事で口当たりや味も良くなり、また酵素抑制物質やフィチン酸の問題も無くなるので消化もスムーズになります。そのまま食べても、お料理に加えるのも良く、手軽に摂取できるスーパーフードと言えます。

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※2021年3月26日、情報を追記しました。

Reference: Am J Clin Nutr. 2009 Jul;90(1):56-63. doi: 10.3945/ajcn.2009.27457. Epub 2009 May 20. Nutrients. 2010 Jul;2(7):652-82. doi: 10.3390/nu2070652. Epub 2010 Jun 24. J Nutr. 2018 Jan 1;148(1):63-69. doi: 10.1093/jn/nxx001. Am J Clin Nutr. 2017 May;105(5):1070-1078. doi: 10.3945/ajcn.116.150037. Epub 2017 Mar 29. J Nutr. 2018 Jan 1;148(1):7-12. doi: 10.1093/jn/nxx008. J Agric Food Chem. 2011 May 11;59(9):5006-14. doi: 10.1021/jf2000772. Epub 2011 Mar 25. J Am Coll Nutr. 2010 Jun;29(3):189-97. doi: 10.1080/07315724.2010.10719833. Ann Clin Biochem. 1991 Jan;28 ( Pt 1):19-26. doi: 10.1177/000456329102800103. J Am Coll Nutr. 2004 Oct;23(5):373-85. doi: 10.1080/07315724.2004.10719381. Int J Food Sci Technol. 2016 Sep;51(9):1937-1946. doi: 10.1111/ijfs.13192. Epub 2016 Jul 31.