【レシチン (lecithin)】　～ 生体には不可欠な脂質のひとつ ～

動植物や私たちの体内に存在している成分のひとつ、レシチン。食品の原材料欄、あるいは化粧品や医薬品の成分欄でもよく目にしますね。

レシチンとは

レシチンとは単一の成分ではなく、数種類あるリン脂質の総称。レシチンを組成するリン脂質にはフォスファチジルコリンをはじめ、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトールなどがあります。

レシチンは細胞膜の主要成分であるのに加え、脳内の神経伝達を促進するアセチルコリンの前駆体でもあり、脳や神経細胞の働きに深く関与しています。脳、神経、血液、内臓組織を正常に機能させるためにレシチンは私たちにとって不可欠な成分です。

レシチンは水と油をなじませること、つまり乳化力に長けており、天然の界面活性剤とも呼ばれています。これが、レシチンが医療品用、化粧品用、食品用などに広く利用されている所以です。また、この乳化特性は、私たちの腸内で油が吸収されるのを助けてくれます。

レシチンを含む食材

レシチンは様々な食材に含まれており、日々の食事を通して簡単に摂取できる成分です。卵、豆類、大豆加工品をはじめ、ピーナッツ、ブロッコリーや芽キャベツなどの緑黄色野菜、小麦胚芽、レバー、赤身肉、魚介類などに含まれています。

レシチンサプリメント

レシチンは食品からだけでなく、サプリメントでも摂取できます。サプリメントは大豆や卵黄から抽出されるものが主流で、中でも大量に生産されているのは大豆由来のレシチンです。しかし、大豆レシチンの原料となる大豆はアレルゲン食材のひとつであること、遺伝子組み替え大豆を使用していることが多いこと（アメリカで生産される大豆の約94%は遺伝子組み替え作物です）からサプリメントを選ぶときには注意が必要です。健康や環境への関心が高い人々の間で人気があるのはひまわりレシチン。原料となるひまわり種子は遺伝子組み替え作物ではない上、低温圧搾（コールドプレス）法で抽出されたひまわりレシチンも販売されています。

レシチンの効果効能

♦ コレステロール正常化 / 心血管疾患リスクを下げる

レシチンには悪玉(LDL)コレステロールを下げる作用が期待できます。高コレステロール血症の患者を対象に行った臨床試験では、1日500mgの大豆レシチンカプセル摂取を2ヶ月間続けたところ、平均して、総コレステロールは42%減、悪玉コレステロールは56.15%減がみとめられました。この結果からも、日々の大豆レシチン摂取は高コレステロール血症の改善に有効である可能性があります。また、悪玉コレステロール低下により、心血管機能にかかる負担が軽減され、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の予防につながります。

♦ 脂肪肝の予防に
脂肪肝を引き起こすものとして、偏った食事、過度の飲酒、運動不足、内分泌疾患など、様々な原因が考えられますが、レチシン欠乏もそのひとつ。なぜならレシチンを組成するフォスファチジルコリンは肝臓の脂質代謝には不可欠な成分であるからです。レシチンが不足すると、肝臓で合成された脂肪は肝臓外へ移送されず、肝臓内に蓄積されてしまいます。言い換えれば、肝臓の脂質代謝や肝機能の改善を図るには、レシチン摂取は有効なのです。

＜併せて読みたい＞
■お酒は飲まないから肝臓は大丈夫？【非アルコール性肝脂肪と非アルコール性脂肪性肝炎】

♦ 潰瘍性大腸炎の改善に

潰瘍性大腸炎は、その名の通り、大腸の粘膜に炎症・潰瘍ができる慢性疾患です。潰瘍性大腸炎の患者は、健康な人と比較すると、腸粘液中のフォスファチジルコリンが非常に少ないことがわかっています。腸粘液は腸管内の細菌や毒素から腸壁の細胞を保護する役割を担っていますが、フォスファチジルコリンはこの粘液の主要成分のひとつなのです。ですから、フォスファチジルコリンの補給は腸の健康にもつながります。ある研究では、レシチンサプリメントは潰瘍性大腸炎の炎症反応を抑制する可能性があり、この疾患の第一選択療法になり得ると結論づけています。

♦ 認知機能をサポート
神経伝達の活性化を促進するアセチルコリンの前駆体であるレシチンは、記憶力や学習能力の向上、さらには認知症やアルツハイマー症の予防や改善にも効果があると期待されています。

♦ 免疫力アップに
レシチンは、免疫機能の改善や向上にも寄与してくれるかもしれません。ラットを用いた研究では、大豆レシチンサプリメント摂取がマクロファージ（白血球の一種）活性を29%増加させ、ナチュラルキラー細胞（リンパ球の一種）の数も92%増加させたと報告されています。ヒトに対しても同様の効果があるかどうかは、今後の研究に期待が寄せられます。

♦ 母乳の詰まりを予防する可能性

一部の専門家の間では、レシチンは母乳が乳管をつまらせるリスクを下げる可能性があると考えられています。カナダの母乳育児財団によると、レシチン摂取は母乳の多価不飽和脂肪酸を増やし、結果として母乳の粘度を下げ、乳管の詰まりや乳腺炎の予防につながるのだそうです。（レシチンサプリメントの摂取は、実際に乳管が詰まってしまったときの対処法・治療法ではありませんので、ご注意ください。）

注意点

食物から摂取するレシチンは安全とされています。一方、サプリメントで摂取する場合、大豆や卵に対するアレルギーを有する方は、原料欄をしっかり確認してください。また、簡単に摂取できるサプリメントは過剰摂取につながりやすいので、表示通りの摂取量を守ってください。

≪レシチンを含むサプリメント≫

・フォスホチジルコリン 100錠のご購入はこちら
・レスベラトロール プラス　ルチン、ケルセチンのご購入はこちら
・ニューロ・ニュートリエントのご購入はこちら

Reference:
Chlstrl 2010; 2010: 824813. Pblshd online 2009 Dec 28. doi: 10.1155/2010/824813
Dig Dis. 2010;28(3):490-6. doi: 10.1159/000320407. Epub 2010 Sep 30.
Cll Bchm Funct. 2008 Dec;26(8):859-65. doi: 10.1002/cbf.1517.
H/O#24.Misc trtmnts. Jan 2005. by J N, MD, FRCPC
DP Hstn, TX – May 23, 2010
Ntrtn. 2005 Jul-Aug;21(7-8):867-73.