【慢性閉塞性肺疾患 (COPD)】　

一向に終息の気配がみえない新型コロナウイルス(COVID-19)。COVID-19には誰もが感染する可能性がありますが、高齢者や基礎疾患のある人は重症化のリスクが高くなります。アメリカ疾病予防管理センター(CDC) によると、基礎疾患には慢性呼吸器疾患、心疾患、エイズなどの免疫不全疾患、免疫抑制剤や抗がん剤による免疫抑制状態、BMI 40以上の肥満、糖尿病、慢性腎疾患、肝疾患が含まれます。

慢性呼吸器疾患を患っていることのリスク

風邪やインフルエンザ同様、コロナウイルスに感染すると、咳や息苦しさなど呼吸器系への影響は決して避けられません。ですから、肺・呼吸器系に持病がある方にとって、ウイルスとの闘いは苦しく厳しい道のりになります。　

困ったことに、自分の呼吸機能が万全でないことに気づかない人も少なくありません。慢性閉塞性肺疾患もそのひとつです。極めて身近な疾患なのですが、咳や痰といった風邪に似た初期症状のため、進行するまで見過ごされがちです。　

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

慢性閉塞性肺疾患は、英語病名 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の頭文字を取ってCOPD と呼ばれます。タバコをはじめとする有害物質を長年吸い込み続けることによって、気管支や肺胞の炎症と破壊が少しずつ進行し、次第に呼吸することが困難になる病気です。　

COPDはとても身近な疾患

世界保健機関(WHO)の2016年統計によれば、世界のCOPD罹患者数は2億5100万人で、この疾患による死者数は年間300万人以上！世界の死因の第４位ですが、第３位に上がるのは時間の問題と言われています。アメリカでは、事故死を除くと、COPDは既に死因第３位になっています。

日本のCOPD罹患者は530万人と推定されています。ところが、実際に医療機関で治療を受けている患者数は約22万人(2017年)。未受診・未診断の“隠れCOPD罹患者”が多く存在しているのです。

COPD の病態

COPDの主な病態として、肺胞が壊れる「肺気腫」と、気道の慢性的な炎症と粘液過剰分泌がみられる「慢性気管支炎」があります。実際のところ、COPD罹患者の多くはこの2つを併発しています。　

気管支の炎症と炎症性の粘液が気道を狭め、空気の通りが悪くなります。また、酸素と二酸化炭素のガス交換を担う肺胞が破壊されることにより、酸素を取り込むことが困難になるのです。

COPD の症状

♦ 初期〜中等度

ごく初期の段階では咳や痰が出やすい、時折運動後に息切れがする程度。そのため、多くの人はCOPDであることに気づきません。進行すると、息切れの頻度が多くなってきます。はじめは階段や坂道で息切れするだけですが、次第に平地の歩行や日常の生活動作でも呼吸が苦しくなってきます。また、咳や痰の増加、喘鳴、胸の圧迫感、呼吸器感染症（風邪やインフルエンザなど）にかかりやすいという症状が現れます。　

♦ さらに進行すると・・・

体重の減少、倦怠感、手足のむくみ、抑うつ状態などもみられるようになります。最重症のCOPDとなると、慢性呼吸不全となり、自宅に酸素供給装置を設置したり、外出時は携帯用酸素タンクを使用することになります。

♦ フレアアップ（突発性悪化）

COPD は風邪やインフルエンザ、気温の変化、刺激物の吸入などをきっかけに、急に症状が悪化し、呼吸困難や咳の発作などを起こすことがあります。これはフレアアップ（急性増悪）と呼ばれます。

COPDの原因　

最大の原因はタバコ！COPD 罹患者の約90%は喫煙者、もしくは喫煙歴のある人です。COPD は中高年に多く発症しますが、長年の喫煙のツケが40歳を過ぎたころに出るのです。大気汚染、粉塵や化学物質への長年の曝露も、COPD発症につながります。　

また、COPD罹患者の5%は遺伝的素因が関与していると考えられています。これらの患者はα1ーアンチトリプシンと呼ばれるタンパク質が不足しています。

COPD の治療

肺胞は一旦破壊されてしまうと元には戻らないため、COPD は根治できない疾患です。そのためCOPDの治療は、進行の抑制、症状の緩和、フレアアップや合併症の予防、そしてQOL（生活の質）の改善を目的としたものになります。治療には薬物療法、酸素療法、呼吸訓練、栄養指導などがあります。重度の肺気腫を伴うCOPDには一時的な改善策として外科治療が施されることもあります。

自宅でできるケア

COPD は一生お付き合いをしていかねばならない疾患です。早期にCOPDであることがわかれば、医師による治療を受けつつ、日常生活でのちょっとした心がけによって、重症化を防ぐことは可能です。

罹患していない人は、今から生活習慣や食事を見直して発症予防につとめましょう。

♦ タバコは絶対ダメ！

COPD 罹患者の90%が喫煙者という事実から学ぶこと──。喫煙している人は速やかに禁煙に取り組みましょう。タバコは喫煙者本人だけでなく、副流煙に晒される周囲の人にも有害であることを決して忘れないでください。

♦ 生活環境

タバコだけではありません。大気汚染、埃、化学物質などによって、気管支や肺の機能低下や疾病リスクは高くなります。化学物質を取り扱う職場や家庭用洗浄スプレーの利用時などはマスク着用を心がけましょう。

♦ 太り過ぎ、痩せ過ぎはダメ！

肥満は心肺機能に負担をかけるため、呼吸がより困難になります。一方、痩せている人は、標準体重や過剰体重の人よりCOPDによる死亡リスクが高いと言われています。なぜでしょう？COPDは呼吸に多くのエネルギーを要するため、より多くのカロリーが消費されます。加えて、COPDになると食欲が低下するため、体重が減少しやすいのです。低体重にさらなる体重の減少が起こると、呼吸筋力の低下、体力や免疫力の低下、肺容量の減少が起こる可能性があります。

♦ しっかり水分補給！

水分をしっかり取ることで、気道内の粘液を薄め、咳を抑え、呼吸がしやすくなります。

♦ 食事

健康のためには日頃から栄養バランスのとれた食事を心がけることはとても大切なことですが、呼吸器疾患には炎症を抑えてくれるもの、そして免疫力をアップさせてくれる栄養を積極的に摂取しましょう。また、適度な体重を維持するため、食事内容や食事回数の工夫も必要です。

♦ 栄養

サプリメントやハーブも活用すると、必要な栄養を手軽に摂取できます。

• ビタミンD

複数の研究において、ビタミンD欠乏は呼吸器疾患のリスクを高めることが示唆されています。実際、重度のCOPD患者はしばしば血中ビタミンD濃度が低いことが確認されています。ロンドン大学・クイーンメアリー校による研究で、ビタミンD欠乏の重度COPD患者にビタミンDサプリメントを摂取させたところ、フレアアップが40%以上下がったと報告されています。

■液体ビタミンD3 +ビタミンK2

ビタミンD3、ビタミンK の相乗効果により骨、循環器の健康維持、免疫力を高めてくれます。ビタミンDはビタミンでありながら、カルシウムの代謝と骨の成長に関与しているホルモンとして知られています。ビタミンK2は破骨細胞の働きを防ぐことで骨密度の減少を防いでくれます。
https://drsuppleusa.com/?pid=142349157

 

• 抗酸化ビタミン

ある研究によると、抗酸化作用を有するビタミンCや EがCOPDや肺機能を改善することが示されています。また別の研究で、喫煙曝露により肺気腫を患ったモデルマウスにビタミンCを与えたところ、破壊された肺胞の修復効果がみられました。ヒトに対する効果については今後のさらなる研究に期待が寄せられます。　

• オメガ3不飽和脂肪酸

有益な抗炎症効果が期待できます。

• コエンザイムQ10とクレアチン

COPD患者55名を対象に行ったある研究によると、コエンザイムQ10(320mg)とクレアチン（340mg） を組み合わせたものを2ヶ月摂取させたところ、運動耐性、息切れ、フレアアップ、生活の質の改善がみられました。　

• N-アセチルシステイン(NAC)

N-アセチルシステインは咳の軽減、痰を切る作用があります。中等度〜重度のCOPD罹患者を対象とした中国の研究で、N-アセチルシステインの長期使用がフレアアップ予防に貢献すると結果報告されています。

• 高麗人参

肺機能を整える働きがある高麗人蔘は、古くから喘息などの呼吸器疾患に用いられてきました。このハーブには抗炎症作用や免疫機能を高める作用もあります。

• ターメリック

マウスを用いた研究では、ターメリックに含まれる成分であるクルクミンが、COPDのような気道の炎症を抑制し、肺癌の進行を遅らせたことが報告されています。　

♦ 呼吸法

横隔膜を使った「腹式呼吸」、ヨガでおなじみ「鼻呼吸」、あるいは口すぼめて息を吐き出す「口すぼめ呼吸」。これらの呼吸法は気道を広げ、新鮮な空気を肺に送り込み、呼吸を楽にします。

♦ エッセンシャルオイル（精油）

COPDのつらい症状を和らげるには、エッセンシャルオイル（精油）を使うのもオススメです！ユーカリオイルは、去痰作用・鎮咳作用があり、気道の炎症を鎮める効果があります。スイートオレンジも、気管支炎など呼吸器系のトラブルの緩和によく使われる精油です。

♦ 適度な運動

階段の上りなどで息切れするようになると、階段や坂道を避けるようになり、次第に筋力・体力が衰えてきます。確かに、スムーズに呼吸ができないCOPDの人にとって、運動は辛いものです。しかし、疾患と末長くお付き合いするには体力が必要です。ウォーキングは取り組みやすい運動のひとつです。身体への負担が少ない水中での運動（アクアウォーキングなど）は、COPDの人の持久力の向上に効果的であるとの研究報告もあります。ヨガや太極拳もオススメです。

♦ストレスを減らすこと

多くのCOPD罹患者は、ストレス、うつ病、不安症というメンタル不調を経験します。このような精神症状で起こりうるパニック発作（呼吸困難など）は、COPDの人にとっては命の危険にもつながります。日頃からストレスを溜め込まないように心がけましょう。

注意点

唇や爪が青ざめる（血液中の酸素レベルが下がっている証拠）、息苦しい、意識障害などの深刻な症状が現れたときは、直ちに医療機関で診察を受けてください。　

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