【食物不耐症】　～ 消化が原因　～

ある特定の食材を口にすると、体調が悪くなる──　それは「食物不耐症」あるいは「食物アレルギー」によるものと思われます。この2つはよく混同されるのですが、発症のメカニズムや症状は異なります。

食物アレルギー(food allergy)：「免疫」の過剰リアクション

私たちの身体には、ウイルスや細菌などの異物に対して、抗体を作って排除しようとする免疫という防御システムが備わっています。アレルギーとは、特定の物質に対して免疫が過剰に反応することで起こります。

食物アレルギーの場合、食物に含まれる特定の物質（主にたんぱく質）を有害な異物と勘違いした免疫が、IgEという抗体を作り出してこれらを排除しようと反応します。「身体を守らなくちゃ！」という使命感に駆られた免疫のリアクションは迅速かつ強力です。

［原因］　免疫の過剰反応

［摂取量］　少量でも発症

［発症タイミング］　即時

［症状］　かゆみ、じんましん、腫れ、吐き気、嘔吐、下痢、呼吸困難など。血圧低下や意識障害などのアナフィラキシーショックに至ると、命に関わる危険な状態になります。

［アレルゲン］　人によって異なりますが、代表的なアレルゲンとして牛乳、卵、小麦、大豆、魚、甲殻類、ピーナッツ、大豆、果物など。

［罹患者数］世界的に2%程度

※小麦アレルギーはセリアック病と明確に区別する必要があります。小麦アレルギーは、免疫反応として、小麦に含まれるたんぱく質を攻撃する抗体が生産されます。一方、セリアック病はグルテンに対する免疫反応が引き金となり、自身の小腸粘膜を攻撃し、小腸での消化・吸収がうまくいかなくなる自己免疫疾患です。

食物不耐症(food intolerance) ： 「消化」障害によるもの

免疫が関与しないものは、食物不耐症といって、食物アレルギーと区別します。アレルギー同様、特定の食物に対する拒否反応ではあるのですが、食物不耐症は消化機能が影響していると考えられています。特定の食物を分解する消化酵素が不足していたり、食品添加物や食物に含まれる天然化学物質をうまく処理できないことが原因です。

［摂取量］　少量では症状が出ないこともあります。

［発症タイミング］　数時間〜数日後

［症状］　下痢、膨満感、胸焼け、ガス、吐き気、腹痛、頭痛、関節痛、倦怠感、鼻水、皮膚の紅潮、発疹、動悸、不安症、もやもや感など、人によって症状はさまざまです。しかし、食物アレルギーのように深刻で命を脅かすような症状には至りません。

［罹患者数］世界全人口の15〜20%が、なんらかの食物不耐症を有すると言われています。

これも食物不耐症

「食物不耐症」という言葉自体は聞き慣れないかしれませんが、ごく身近に存在する疾患です。例えば、飲酒によって顔が真っ赤になったり、心臓がドキドキしてしまう──　これはアルコールを分解する酵素の欠如によるものです。また、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする方は、乳糖を分解するラクターゼという酵素の不足が原因です。

代表的な食物不耐症

♦ 乳糖
ラクターゼ（酵素）不足に起因する乳糖不耐症を抱える人は実に多く、世界人口の約65%が牛乳や乳製品に含まれる乳糖を消化しにくい体質なのだとか。腹痛、膨満感、下痢、ガスなどの症状が出ます。一方、熟成チーズやケフィアは乳糖が少ないため、乳糖不耐症でも比較的食べやすい乳製品です。

♦ グルテン

小麦などに含まれるグルテン（たんぱく質）がうまく消化できないグルテン不耐症。セリアック病や小麦アレルギーの検査では陰性であっても、何らかの不快な症状を経験する人はグルテン不耐症の可能性があります。症状は、セリアック病の症状と似ており、膨満感、腹痛、下痢、頭痛、倦怠感、発疹など身体症状の他、うつや不安というメンタル症状が出る人もいます。

♦ カフェイン
カフェインによって頭痛、胃痛、不安感、興奮、動悸などの症状が現れる人もいます。カフェイン不耐症は遺伝に加え、カフェインの代謝・排泄力が低いことが原因と考えられます。

♦ 天然化学物質
食物に天然に含まれている化学物質に対して不耐症を持つ人もいます。これらの天然化学物質には、果物や野菜・スパイス・ナッツ類・蜂蜜など幅広い食材に含まれているサリチル酸塩、発酵食品・ドライフルーツ ・塩漬け肉・熟成チーズ・発酵アルコール飲料などに含まれるヒスタミン、そして果糖（フルクトース）などがあります。

♦ 食品添加物

アスパルテーム（人工甘味料）、MSG（うまみ調味料）、合成着色料などの添加物によって、頭痛、じんましん、腫れ、うつなどの症状が出ることもあります。

自分は食物不耐症なのか？　原因食物の特定方法は？

食物不耐症は、原因となる食物も発現する症状も多岐に渡る上、少量の摂取では症状が出にくいこともあり、なかなか気付きにくい疾患です。しかし、心身の不調が続くようであれば、普段何気なく食べているものを疑ってみましょう。

では、不調の原因となる食物をどのように特定するか？医療機関で検査を受けるのもよいでしょう。あるいは自己テストも可能ですよ。疑わしい食物を数週間口にしないこと！その食品に対する不耐症を有していれば、除去期間中、徐々に体調が良くなるはずです。そして数週間後、除去した食材を少し口にしましょう。再び体調不良に陥れば、その食物に対する不耐症であることが確認できます。

食物不耐症への対処法

食物不耐症の症状は、食物アレルギーほど深刻ではありません。少量であれば心身に負担はかからないはずですが、体調や日常生活に悪影響を及ぼすようであれば、その食物を極力摂取しないよう努める必要がでてきます。残念ながら食物不耐症には有効な治療法はなく、その食物を避けることが唯一の対処法です。

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