【ドライアイ】　〜日常のセルフケアで予防・改善 〜

瞬く間に感染が拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)。私たちは生活様式の変化を余儀なくされています。外出自粛や在宅勤務を続けている方も少なくないでしょう。このような巣ごもり生活で、パソコンやスマートフォンなどデジタル機器の画面を見て過ごす時間が増えていませんか？そこで懸念されるのがドライアイです。

目の健康は涙があってこそ！

ドライアイを語る前に、涙の仕組みと役割をおさらいしましょう。

♦ 涙の構造

涙は単なる水ではありません。眼球という直接外界と接している器官を守るバリアです。このバリアは、（角膜から近い順に）ムチン層・水層・油層の3層で構成されています。

• ムチン層：涙を目の表面に密着させる役割。
• 水層：涙腺から分泌される涙の主成分。細菌から目を守り、角膜に栄養や酸素を供給。
• 油層：マイボーム腺から分泌される油の層。涙の蒸発を防ぐ役割。

♦ 涙の働き

目の健康は、涙によって支えられています。

• 乾燥や外界の刺激から目を守る
• 異物（ゴミやホコリ）を洗い流す
• 菌の侵入や感染を防ぐ
• 目の表面を滑らかにし、（光を正しく屈折させることで）見え方を良くする
• 目に栄養や酸素を供給

♦ まばたきの重要性

「まばたき」することで、涙が目の表面全体に行き渡るようになっています。まばたきの度に涙というベールが目の表面全体を覆い、目が乾くのを防いでいます。私たちは1分間に平均15〜20回まばたきをしています。

ドライアイとは

ドライアイは、涙が適切に目を潤さなくなった状態を指します。このため、目の表面が傷ついたり、不快な症状が引き起こされてしまうのです。目の表面の潤いが十分に保たれない要因として、涙の「量」の減少、あるいは涙の「質」の低下が挙げられます。

♦ 涙そのものが減ってしまうという「量」の異常

涙腺が涙を十分に生成・分泌しないことで引き起こされます。涙腺の機能低下や損傷によるもので、そのリスク要因として加齢、ストレス、薬の副作用などが挙げられます。シェーグレン症候群（涙腺や唾液腺が慢性炎症を生じ、涙や唾液の分泌が低下する疾患）も、こちらのタイプに含まれます。

♦ 「質」の異常

まぶたの縁にあるマイボーム腺から油層の成分（油）が十分に分泌されないと、涙の水分が蒸発しやすくなります。

ドライアイの主な症状

• 目がショボショボする
• 目がゴロゴロする（異物感や不快感）
• 目が痛い
• 目が痒い
• 目やにが出る
• 目の充血
• 疲れ目（眼精疲労）
• かすみ目
• 光をみるとまぶしい

ドライアイを引き起こす要因

涙の量または質の低下の要因として、次のようなものがあります。

• 加齢
• コンタクトレンズ装用
• 環境（冬季の乾燥、タバコの煙、エアコンやヘアドライヤーの送風、大気汚染など）
• 長時間のデジタル機器使用
• ストレス
• 薬の副作用（抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、避妊薬など）
• レーシック手術
• 自己免疫疾患（シェーグレン症候群）

また、男性よりも女性のほうがドライアイになりやすいとされます。例えば、アメリカの50歳以上の男女のドライアイ罹患数は、男性105万人に対し、女性320万人というデータがあります。さらに妊娠、閉経、経口避妊薬の使用がドライアイ発症リスクを高めることが複数の研究で示唆されています。

医療機関での治療法

ドライアイに対する医療的アプローチとしては、涙に近い成分の人工涙液（市販薬）のほか、涙液の産生を増やすシクロスポリン点眼薬（処方薬）、涙の排出口を塞いで目に涙を溜める涙点プラグなどがあります。　

自分でもできるドライアイ対処法

重症のドライアイには処方薬や涙点プラグを含む治療が必要になりますが、多くの場合は、日常のセルフケアで症状の緩和が可能です。

♦ 量や質のブースター　（人工涙液、眼軟膏、キャスターオイル）

まずは、不足している「量」や「質」を補うことが大切です。涙液に近い成分のドライアイ用点眼薬を1日3〜4回使用しましょう。防腐剤無添加の1回使い切りタイプやホメオパシー点眼薬なら目に優しいですよ。症状によっては、就寝前の眼軟膏も助けになります。

自然療法的アプローチとしては、鎮痛や抗炎症作用をもつキャスターオイル（ひまし）の点眼。キャスターオイルは古代エジプトでも目の疾患に利用されてきましたが、低濃度キャスターオイル点眼によってマイボーム腺機能不全の改善、涙液油層の安定、涙液蒸発率の減少がみられたという研究報告もあります。

♦ ホットタオル（蒸しタオル）で温湿布

目を温めることでマイボーム腺開口部の詰まり（脂）が溶け、油分が分泌されやすくなります。温湿布は1回5分、1日2回以上行うと効果的です。温湿布は目の周りの血流改善、そして目の筋肉緊張や精神的ストレスを緩和する効果もあります！

♦ まぶたの洗浄

温湿布に加え、まつ毛の根元周辺を優しくマッサージするように（ベビーソープなどで）洗浄すると、まぶたやマイボーム腺に詰まった脂や汚れを除去できます。

♦ オメガ３不飽和脂肪酸の摂取

ある研究で、目の炎症軽減、涙の生成や分泌にオメガ3が有効であることが示されています。オメガ3は亜麻仁油、鮭、青魚などに豊富に含まれるほか、サプリメントでも手軽に摂取できます。

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♦ しっかり水分補給！

水分を十分に取ることは、目にも身体にも大切です。1日にグラス8〜10杯の水を飲むことを心がけましょう。

♦ 乾燥や刺激から目を守る工夫

風や太陽光、タバコの煙、ドライヤーやエアコンの送風は目を乾燥させます。室内で加湿器を使用したり、風や日差しの強い日の外出時はメガネやサングラスで目を保護しましょう。

♦ コンタクトレンズ装用時間

コンタクトレンズによって涙が分断され、ドライアイが起こりやすい状態になります。ドライアイの症状がある方は、コンタクトレンズの装用時間を短めにしましょう。

♦ “20-20-20” ルール

通常1分間に15回ほど繰り返すまばたき。アメリカ眼科学会によると、デジタル機器使用中のまばたき回数は1分間にわずか5〜7回、つまり最大66%も減少してしまうのです。まばたきが減る分、目の乾燥リスクが上がるのは至極当然のことです。そこで、デジタル機器使用中の心得として推奨されているのが “20-20-20”ルール。「20分ごと」に「20フィート(約6メートル)先にあるものを「20秒間」見る──　このように時々目を休めて、まばたきをし、涙の量を回復させましょう。

まとめ

高齢化、業務のIT化、ソーシャルネットワーク利用や動画サイト閲覧の増加に伴い、今やドライアイは眼科医が取り扱う疾患の中で相当の割合を占めています。新型コロナウイルスがもたらした生活様式の変化に応じ、ドライアイ罹患率はさらに高くなることが予想されます。

しかし、ドライアイは（一部の疾患や薬の副作用に起因するものを除き）、原因も対応策もシンプルです。ちょっとした心がけで予防も症状改善も可能なのです。

お肌の美しさや健やかさは水分・油分のバランスが作るもの。目も全く同じです。潤い（涙の量）、そしてバリア（涙の油層）を最適な状態にして、目を守りましょう。

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