【白いんげん豆】 ～炭水化物ブロッカーの原料～

主菜、副菜から和菓子に至るまで、幅広く使われるいんげん豆。豆自体の味は強い個性がないため、和洋を問わずあらゆる料理にマッチし、その上栄養価が高い！さらには、種皮の色が多様なので、彩りも考えながら楽しく使える万能食材です。　

いんげん豆

色や大きさ、模様など外見に違いはあれど、以下の豆は全ていんげん豆（学名Phaseolus vulgaris / 英名 common bean）です。

赤紫色系のいんげん豆： 「金時豆」など。英語ではその色や形状から “kidney bean” と呼ばれます。

斑入りのいんげん豆： 「うずら豆」など。英語では “pinto bean” と呼ばれます。

白色系のいんげん豆： 「大福豆」「白金時豆」「白花豆」「手亡豆」など。

白いんげん豆とは？

今回のテーマは白色系のいんげん豆、総称「白いんげん豆」です。日本で複数の種類と名称があるように、アメリカにも白いんげん豆には、米海軍の食糧として使われている“navy bean”、少し大きめの “great northern bean”、金時豆の白バージョンともいえる “cannellini”、濃厚でクリーミーな食感の “baby lima” などがあります。大きさや食感は若干違いがありますが、どの白いんげん豆も味はよく似ています。

主な栄養成分　

加熱調理した白いんげん豆1カップ(179g) あたり： （249カロリー）

タンパク質　17.4g

食物繊維　11.3g        

炭水化物　44.9g

脂質　0.626g

ビタミンB群（チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸など）、マグネシウム、鉄、銅、カルシウム、リン、カリウムなどが豊富に含まれています。加えて、没食子酸やカテキンなどのポリフェノールも多く含まれおり、高い抗酸化力が期待できる食材です。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」（2020年版）によると、1日あたりの食物繊維摂取目標量は、成人男性21グラム以上、成人女性18グラム以上とされています。加熱調理した白いんげん豆1カップで、1日に摂取すべき食物繊維の半分以上を補うことができます。

白いんげん豆の効果効能　

♦ ベジタリアンにはうってつけの食材！

白いんげん豆を含む豆類は、ベジタリアンやヴィーガンに不足がちなタンパク質やビタミンB群、ミネラルの摂取にはうってつけの食材です。

♦ 食物繊維 / 消化機能の改善、心血管疾患や糖尿病の予防など。

食物繊維は便通を促すほか、プレバイオティクス（善玉菌の餌）として腸内環境を整える働きがあります。免疫細胞のおよそ70%が腸内に存在しているため、良好な腸内環境＝免疫力アップにもなります。また消化機能が改善することで、食物の栄養が適切に吸収され、全身の健康につながります。さらに、食物繊維は、コレステロール低下作用、食後血糖値の上昇抑制効果もあるため、心血管疾患や糖尿病の予防にも有効です。

♦ ダイエットの強い味方

豊富な食物繊維とタンパク質のおかげで腹持ちが良くなり、間食の欲求を抑えることができます。

米国国民健康栄養調査1999-2002年のデータを用いた調査にて、定期的に豆類を摂取している人は、そうでない人に比べて食物繊維やミネラル類の摂取が高い一方、肥満になる可能性は22%低く、さらにお腹周りに余分な脂肪がつくリスクも23%低いことが確認されています。

白いんげん豆から作られた炭水化物ブロッカー　

近年、ケトジェニック・ダイエットをはじめ、炭水化物（糖質）制限ダイエットが流行しています。確かに、炭水化物を制限すると、短期間のうちに体重やウエストサイズの減少を実感するでしょう。しかし、炭水化物は私たちの体の活動を支えるエネルギー源、脳にとっての唯一のエネルギー源です。その炭水化物を極端に制限すると、体や心に大きな負担がかかります。

♦ 太るのは炭水化物（糖質）のせい？　

なぜ「炭水化物＝太る元凶」と位置づけられてしまうのでしょう？　

食べ物から摂取された炭水化物は、唾液や膵液に含まれるα-アミラーゼという消化酵素によって分解された後、最終的にグルコース（ブドウ糖）となって小腸から吸収され、体のエネルギーとなります。ところが、炭水化物の“過剰な”摂取や運動不足によって余ってしまったエネルギーは中性脂肪として蓄積され、これが「太る」ことにつながるのです。

♦ 炭水化物（糖質）対策

1日3食の主食（炭水化物）は“適量”が基本！過剰摂取に気をつけましょう。そして、白い炭水化物（精製された白米や小麦粉）よりも茶色い炭水化物（玄米や全粒粉）の方が栄養面でも優れている上、消化に時間がかかるので満腹感も持続します。また、豆類を定期的に摂取することで、良質なタンパク質やビタミン・ミネラルを得ながら、健康的に体重維持することが可能です。

♦ 白いんげん豆由来物質が炭水化物の消化・吸収を抑制する

炭水化物の過剰摂取が太る元凶とわかっていても、炭水化物が大好きすぎて、つい食べすぎてしまう・・・。そんな方には、白いんげん豆由来のファセオラミン(商標登録名 フェーズ2)という成分が体重や脂肪の増加を防いでくれるかもしれません。フェーズ2はα-アミラーゼの働きを阻害することで、炭水化物が体内で糖として吸収される量を最大66%ブロックする効果があります。　

※フェーズ2は、ご飯、パン、パスタ、じゃがいもなどの複合糖質に対するブロック効果が確認されています。一方、α-アミラーゼによる消化を必要としない単純糖質（お菓子や果物に含まれる砂糖や果糖）の吸収を妨げることはできません。

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豆類を食べていれば、炭水化物の吸収をブロックできるか？　　

白いんげん豆を含む豆類は、それ自体が栄養バランスに優れた食材ですから、日頃から積極的に摂取したいものです。では、白いんげん豆を食べれば炭水化物の吸収が抑制されるか？というと、Yes と断言できません。いんげん豆を摂氏100℃で10分煮続けるとα-アミラーゼ阻害剤は不活性化されてしまうため、完全に調理された豆では炭水化物の吸収をブロックする効果は期待できないとの研究結果があります。とはいえ、生や加熱不足のいんげん豆は、残存したレクチンの毒性によって嘔吐や下痢などの消化器症状が起こります。　

白いんげん豆がもつα-アミラーゼ阻害作用を確実かつ安全に利用するには、確かな抽出・加工技術をもつブランドのサプリメントを使うのがよいでしょう。

 

白いんげん豆の調理方法

白いんげん豆は、癖のない風味なので、スープやサラダ、ポークビーンズなどの煮込み料理など、さまざまな料理に使うことができます。乾燥した白いんげん豆を使う場合には、他の豆類同様に約6〜8時間水に浸してから、沸騰状態で柔らかくなるまで煮ると、レクチンによる中毒の心配はありません。下処理が面倒な場合は、缶詰の白いんげん豆を使うこともできますが、缶詰の豆には塩分が含まれている場合があるので、使用前に水洗いしたり、低塩か無塩の缶詰を選ぶようにしてください。

Reference: PNAS April 3, 2012 109 (14) E788-E796 Oxid Med Cell Longev . 2016;2016:1398298. doi: 10.1155/2016/1398298. Epub 2016 Dec 25. J Am Coll Nutr . 2008 Oct;27(5):569-76. doi: 10.1080/07315724.2008.10719740. Obiro, W., Zhang, T., & Jiang, B. (2008). The nutraceutical role of the Phaseolus vulgaris α-amylase inhibitor. British Journal of Nutrition, 100(1), 1-12. doi:10.1017/S0007114508879135