メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは？

通称メタボの名前で急速に認識されていった症状ですが、メタボ腹、メタボダイエット、メタボ社長などなど日本では肥満の代名詞として使われている傾向があります。しかしメタボはただの肥満という意味ではありません。

メタボリックシンドロームの診断基準は国や団体により違いがありますが、一般的に以下の5つのカテゴリーのうち2つ、もしくは3つ以上のカテゴリーに当てはまるとメタボリックシンドロームと呼ばれます。

· 内臓肥満（腹囲のサイズは各団体により違いがあります。）

· 高血糖（空腹時で100以上）

· 高脂血症（中性脂肪150以上）

· 低HDLコレステロール（40未満）

· 高血圧（130/ 85以上）

何故メタボリックシンドロームは危険なのか？

一つ一つのカテゴリーを見ていくとそれほど重大な数値ではありませんが、複数のカテゴリーが重なることで

心臓病、動脈硬化、脳卒中などの循環器系疾患、

糖尿病と合併症、肝脂肪、卵巣嚢腫

などの病気にかかる確率が急激に上昇するからです。

アメリカ心臓協会の概算によると、アメリカ国内で5千万人がメタボリックシンドロームにかかっているといわれ、過去10年で急速に増えています。

インスリン抵抗性とメタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームの進行にとって特に重要なのが、内臓脂肪とインスリン抵抗性（高血糖）の関係です。

インスリンはすい臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。

インスリン抵抗性とは、長期間に渡り砂糖などの糖分を取り過ぎることでインスリンの働きが落ちて血糖値が下がりづらくなったことを言います。

そして内臓脂肪が溜まると様々なメカニズムにより一層インスリンの働きが落ちる傾向にあります。

一旦インスリン抵抗性が起きると、脂肪細胞は余分な血糖から遊離脂肪酸を作り始めます。

この遊離脂肪酸は脂肪に蓄えられるか、血中に放出されるかの２つの運命をたどります。

蓄えられた遊離脂肪酸は、脂肪をより一層肥大させ肥満が悪化し負のサイクルに陥ります。

血中に放出された遊離脂肪酸は、肝臓で超悪玉コレステロール（VLDL）を増やし、善玉コレステロール（HDL）の生産を減らします。そして動脈硬化を引き起こしやすい小さなサイズのコレステロールを増やしていきます。

遊離脂肪酸の生産が増える。
→　脂肪細胞の肥大 　　　
→　超悪玉コレステロール（VLDL）の上昇　　　 　
→　善玉コレステロール（HDL）の減少　　
→　サイズの小さなコレステロールの上昇
⇒　動脈硬化の発症

またインスリン抵抗性の起きた脂肪細胞は、炎症を引き起こす様々な化学物質を大量に放出し始めます。

動脈硬化の第一歩は動脈の炎症から始まるため、脂肪細胞へのインスリン抵抗性は動脈硬化にとって非常に大きなインパクトとなります。

そして内臓脂肪由来の炎症を引き起こす化学物質は、一層の内臓脂肪を助長することが知られ、ここでも負のサイクルに陥ります。

内臓肥満が増えるにつれてこの炎症を引き起こす化学物質も増える傾向にあり、メタボリックシンドロームの進行具合を測定するのにも使用されます。

脂肪細胞　
→　炎症を引き起こす化学物質(TNF-α, IL-6, IL-1β, MCP-1, etc.)の増加　
→　動脈の炎症, 脂肪細胞の増加　
⇒　動脈硬化

加えてインスリン抵抗性が続くと食後血糖が下がらなくなり、血中で糖とたんぱく質が化学反応を起こし、糖化最終産物（AGE）という物質を作り出してしまいます。

この糖化最終産物（AGE）は非常に強く炎症を引き起こすと共に、老化を加速させることが知られています。

食後血糖の上昇　→　たんぱく質の糖化　→　糖化最終産物（AGE）　→　炎症、老化　→　動脈硬化

インスリン抵抗性のまとめ

· 内臓脂肪の蓄積
· 超悪玉コレステロールの増加
· 善玉コレステロールの減少
· 小さく危険なコレステロールの生産
· 炎症の増加
· 糖化最終産物（AGE）の増加

といった要因で動脈硬化を引き起こす、また悪化させます。

インスリン抵抗性に加え高血圧と高脂血症が加わると、一層 心臓病、動脈硬化、脳卒中などの循環器系疾患、糖尿病と合併症のリスクを高かめる環境をどんどん作り上げていくことから、メタボリックシンドロームの危険性を理解していただけると思います。

次回【メタボリックシンドロームの予防と治療】に続く。

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